エンドユーザーの視覚・触覚にアプローチする ニューノーマルな空間デザインとは

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エンドユーザーの視覚・触覚にアプローチするニューノーマルな空間デザインとは

人材不足や非接触対策に悩む小売り店や飲食店向けのソリューションとして無人AI 決済システムを提供する、というコンセプトでJR 東日本が開発を進めている無人AI 決済店舗「TOUCH TO GO」。その店舗デザインを担ったDESIGNESS® 株式会社の森一樹さんにニューノーマルな店舗づくりのあり方について伺った。

 

目次

1.ブランディングから展開する店舗づくり
2.ニューノーマルな無人店舗空間づくりの鍵は照明による視覚効果
3.無人店舗の価値は「これまでと違った体験」
4.カメラ & センサーと照明器具を意匠に昇華させた
5.運営、システム、デザインの三者をどうかみ合わせるか
6.TOUCH TO GO 利用者の声
7.デジタル、アナログ、インプレッションの快適性は新旧融合

 

 

写真提供:DESIGNESS® 株式会社/長谷川健太

1.ブランディングから展開する店舗づくり

 多様化が進む現在、空間だけ、店舗のデザイン一つだけかいつまんでも、コンセプトや業態は伝わりにくい。そこでより良い店舗を作るにはブランディングから展開しなくてはいけないと思っています。
 ハードからソフトに寄っていくブランディングを志向しており、ロゴやパッケージ、ブランドステイトメントなどから全体を包括できるデザインを手がけています。いわゆるエンドユーザーのタッチポイント、視覚や触覚にアプローチしていく空間をデザインすることがより効果的、というのが僕の考えです。空間デザインにおいてデジタルファブリケーションといわれるものを生かしていくことは日本ではまだ誰も手をつけていないフィールドなので、業態や場所、タイミング……今やるのか、もっと進んでからやるのか、悩ましいところですが、まずは運営側から、どのような店舗経営をしていくのかを考えていくべく、取り組んでおります。

“DESIGNESS 森一樹氏”DESIGNESS® 株式会社 森一樹氏

 

2.ニューノーマルな無人店舗空間づくりの鍵は照明による視覚効果

 現在の状況から店舗はいろいろな意味で非常に制限が強くなっていますが、無人非接触という店舗では、実は空間のデザインだけではなく視覚や音などの情報が重要だと考えています。
 たとえば100 円のコーヒーは現在さまざまな店舗で提供されていますが、今回の店舗、高輪ゲートウェイ駅のTOUCH TO GO で言えばコーヒーの味も何パターンも調べて、もうワンランク上のものを提供していこう、今までとちょっと違った体験ができる店舗を作っていこうと。 
 ビジュアル的にいうとセリングと言われているものはブランディングと反する部分もあって、一発のマーケティングでどう勝負するかが大事です。つまりパッと見たときにどれだけのインプレッションを与えるか、どれだけの情報を伝えるか、一瞬で強い印象を与えることが重要です。それに対して駅ナカのコンビニは、簡素で特徴を必要としない空間の印象があります。そこに今まで体験したことのなかった「無人店舗」という強い印象のものがいきなり現れる。そこには何か違うエッセンスを与えなくてはいけないと考えました。この場所に馴染ませつつも強い印象を与えたいわけです。
 今まで体験したことのない空間を「使いたくなる」空間体験にもっていくにはやはりまず視覚で取り込んでもらおうということで、DNL の照明を使ったのはとても大事なポイントです。

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3.無人店舗の価値は「これまでと違った体験」

 ここ数年、東日本大震災を超えてから照明の使い方が変化してきたように感じています。具体的には無機質で男気があってかっこいい、たとえば配管を露出させてインダストリアルの雰囲気を出したりするようになりました。そういう今までタブーとされていたもの、隠していたものをあえてどんどん露出していくというのが一連の流れになり、その流れに乗って設備や器具の露出が増えました。その先駆けはスケルトン天井で、その辺りからアーキテクチャのパーツまで露出する手法が進んできたという感じです。
 同業者と真新しい設備や器具を駆使して綺麗に作ると新しすぎてちょっと違和感があるよね、と話しています。不燃性などを考えれば日本にはとてもいい製品が多いのですが、それを選んで使うだけで作ると結局製品をセレクトするだけの仕事になってしまうんです。
 そこで、サイトスペシフィック、つまりその場所でしかない、場所性は重要になってくると思います。TOUCH TO GO の空間は、電球色でないものを使っているんですが、ここを手がける前年にJR 赤羽駅のニューデイズがあったところに紀ノ国屋さんの商品を扱う店舗を作りました。最初は「スッと買う」駅の店舗で高級なものを扱うことに違和感があったのですが、それをまとめる上で「これまでと違っ た体験」というのが一つの価値になると思ったんです。

 重要なポイントは天井高で、MAX にとりました。センシングする位置を高くするとカメラの台数を抑えられます。それと一方で、天井高が低いとカメラの台数が多くなる。無人店舗は商品の画像と、人を追従する画像との2 箇所をセンサーで捉えてカウントしているのですが、台数が多いといろいろなところに配線や設備が出てきてしまいます。すなわち、配線や設備を全部隠すとどん どんコストがかかります。
 赤羽駅での店舗づくりでは、茶室のようなちょっとした躙口(にじりぐち)があって、入った時に茶釜のような大事な部分があって、という空間の作り方をして、和のイメー ジを取り入れ、他とは違った新しいコンビニになるようにしました。この時点で僕としては新しい、今でいうニューノーマルというのを作ったんです。またランダムにライン照明を設置することで混沌とした赤羽のイメージを表現しました。

赤羽駅の店舗赤羽駅の店舗(外観)
赤羽駅の店舗赤羽駅の店舗

 

4.カメラ & センサーと照明器具を意匠に昇華させた

 この赤羽の店舗でちょっと器具が露出しすぎたのではないかという反省がありまして、次回は露出を削減したいと考えました。そこで高輪ゲートウェイでは、天井を全部黒にしてしまおうという発想が生まれ、さらにそれなら全部統一で黒にしようと。そうすることで今までになかったコンビニの空間ができるのでは、ということになりました。
 ちょっと尖りすぎているけど、逆にニューノーマルというところからするとコンビニでストリートっぽい白い照明を使ったらとても印象に残って、このコンビニにしかない空間ができるだろう、日本のみならず世界でもここしかないという空間ができる、というのがまず一つ。

 それから照明をあえてランダムにすることで、実際に照明を見ようとするとまぶしくて配線が見えないんです(笑)。しかし無人店舗においては、明るくないとセンサーに商品が認識されないという面もあり、結局総合的に照明を露出させることがベストということになりました。
 また、今回の天井部分のデザインをするうえで、大きなポイントとなったのは実は照明器具自体の大きさ、形などの意匠です。今回、DNLのTRIM LINE LED 照明器具TRE2 を採用したのですが、その主な理由は、給電の配線隠しのルーバーの高さや幅と同じようなサイズ感で、5000Kのものはないかと探したところ、このTRE がピタリとハマったのです。これはもう運命的な出会い(笑)。これしかない!と思いました。また、この天井の意匠をタイルのデザインにも反映し、TOUCH TO GO のシンボルの一つにもなっています。
 それと、小さな店舗空間のなかで商品をいかにギュギュっとしっかり照らすかと考えたとき狭いところにも収まるコンパクトさと明るさが担保できるライン照明器具を志向し、FXD-LED を選択しました。
 この店舗は西側から夕日が結構当たるんですが、ガラスや白いものは 反射してしまいます。そうするとカメラが読み込めないので、内装の素材には基本的に艶消しを用いています。

 

5.運営、システム、デザインの三者をどうかみ合わせるか

 人手不足やコロナ禍の影響もあり、無人店舗は時代の流れであり、全ての要素が重要ではありますが、色々な側面から見て優先順位を作らなくてはいけない。店舗デザインという面、運営、システム、様々な立場から見ると店舗のデザインはこうでなくてはいけない、というものがそれぞれにあります。たとえばシステム側からするとカメラの位置はこうあって欲しいという要望があり、運営的には時間帯による集客の面から、やはりこうあって欲しいという要望がある。そこで三者がどう噛み合っていくか。それが非常に大事なポイントになります。
 つまりニューノーマルということで言えばこれからは店舗の運営しかりなのですが、ただデザインをするだけでなくシステム的な設備に対しても店舗のデザイン要素が入ってくる。今まで見せなかったものを見せたり、いかに優先順位をつけるかということを考えていかなくてはいけない。
 換気口でもエアコンでも、もちろん間接照明器具でも、これまで見せなかったものにはもっとデザインする余地があって、その視点からするとDNL さんの製品は非常に大切だし、もっと使いたいと思っています。
 スポットの照明ひとつとってもヨーロッパなどでは小型で設備や配線も緻密に計算してプロダクトとしてデザインされています。しかし日本では設備のデザインは優先していない面があります。別の見方をすれば色々な部分でデザインを向上させる余地が日本にはすごくあるということ。限られた製品の中から選ぶしかない、というのが日本の現状ですが、ニューノーマルとして考えれば、もっと出てくることを期待していますし、それらを使いたいと思っています

 

 

6.TOUCH TO GO 利用者の声

 3/17 オープンということでコロナウィルスによる自主規制にバッチリはまってしまい、店舗は開けていましたがもちろん人はいませんでした。それがここ最近、見ているとこの店舗の使い方にとても慣れている方がたくさんいる。初めて利用する人じゃないな、というのがすぐにわかるんです。レシートのQR コードでアンケートを取るんですが、評判はどんどん良くなっています。今までは驚きや戸惑いがあったものが慣れてくるとこれがもっとあったらいいのに、という声に変わってきて、そこにたまたまコロナが加わって予想していなかった追い 風になりました。
 ビッグデータをとってどんどんアップデートしていくんですが、その精度も上がってきました。デジタルのプロダクトとの付き合い方、プロダクトがアップデートされることによって、私たちのリテラシーも上げていかなくてはならない。おそらく今この無人店舗を使っていないお年寄りも、何年かしたら使えるようになってくるのではないか、と思っています。
 西田幾多郎のいう純粋経験ではないですが、空間に入った時の道筋をイシューするだけで人々にその純粋経験をしていただける。これをこの場に体現するにはシンプルなもの、シンプルな空間、シンプルな決済方法でストレスを与えない。それはとても難しいことなのですが、そういう空間にいかに簡単なものを作るかという相反する課題をどうこの空間にインストールするか、というのが今回の意義でもあるんです。

 

7.デジタル、アナログ、インプレッションの快適性は新旧融合

 店舗づくりに当たって、経営から入ることもあります。ブランディング、CI には社会貢献活動とか、自分たちの姿勢を出さなくてはいけない。それは空間で体現してもいいし、ロゴで体現してもいい。お客さんに触れるタッチポイントで言えばコーヒー1つでもいいんです。自分たちの姿勢を押し出しすぎず、背景で柔らかく表現していくこと。さりげなく感じ取ってもらうというのが大事だと思っています。
 そのように企業としての姿勢を感じさせるアイテムを使うわけですが「タッチポイント」というと「触れる」ことのように捉えられがちです。僕は「感じてもらう」こともタッチポイントだと思っています。それがひいてはサステイナブルにつながってくる。
 お客さんありきであればそこだけを最優先に考える店舗づくりもできますが、SDGs の面からコンビニエンスストアのあり方を考える時、どんなふうに人を使わない店舗を作っていくのか。あからさまに環境をうたうのもどうかと思う部分もあります。しかし、無人や非接触が出てくるのは世の中の流れとしては当然のことで、高輪ゲートウェイという駅において極力快適であり、インプレッションもきちんとあるというスペースにしたいと考えた一つの結果が高輪ゲートウェイの「TOUCH TO GO」なのです。
 店舗のデザイン「だけ」考えてくれ、と言われても業界によってはデザインが全く生きていないところもあります。そういう会社には客観的なお客さんの目線で長所と短所を伝えます。売るものをどう見せるか、入り口での印象やお客さんの動線、そういうことを追求していくのですが、そういう場合、照明は非常に大事な要素です。
 店舗内だけでなく内外の環境を最大限に考えて空間を作っていくことで、空間自体が売りになっていきます。そうしたものを作る時、僕は日本の伝統的な空間の作り方をいつも意識していて、日本独自のニュー ノーマルを作りたいと思っています。デジタルとアナログはじめ、これまであったものと新しいものを融合させるというのが、僕がやりたいことなのです。

 

【この事例で使用された器具】

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