後世に伝え、お参りしてもらう祈りの場を照らす照明

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後世に伝え、お参りしてもらう祈りの場を照らす照明

勝覚寺は千葉県山武市、九十九里浜からほど近い場所に、六二代村上天皇の勅願寺として天歴元年・947年に開山された由緒あるお寺である。現在の本堂は元禄8年(1695)建立、本尊は天竺で謹刻された拈華微笑(ねんげみしょう)の釈迦如来像。その周囲を東国随一の傑作と謳われる運慶作の四天王、阿難・迦葉が囲む。こうした由緒ある仏像がこの地に祀られている所以には謎も多いが、これらの仏像が元となり「片貝」「作田」など、周辺の地名がついたという様々な伝説も伝えられており、古くから親しまれてきたお寺であることがわかる(http://shokakuji.com/)。

この由緒ある勝覚寺が、ライティングに力を入れ始めたきっかけはなんだったのだろうか。住職の小杉秀文氏にお話を伺った。

第五十七世住職 小杉秀文

真言宗智山派 萬徳山聚楽院四天尊 勝覚寺
第五十七世住職 小杉秀文
「人々の思いを受け止めてきた祈りの場を、未来に向けて守っていきたい」と語る。

 

目次

1.大切な仏様を守るために
2.仏像展での仏像の見せ方に注目して
3.さらなる落ち着いた空間を
4.照明を設置して変化した点
5.お寺には秘められたポテンシャルがある
6.何百年も人々の思いを受け止めてきた仏様

 

 

1.大切な仏様を守るために

令和元年9月9日の台風15号の被害をきっかけに、当初はお堂の改修を考え始めました。今でもお堂は傾いたままなのですが、海が近いので津波の心配もあるし、今後の災害に対する心配もあります。

そこで、この寺に伝わる大切なお像を後世に伝えるためにはどうしたらいいだろう、と考えたのです。災害からお像を守るためには鉄筋コンクリートの頑強な収蔵庫を作らなくてはいけないのではないかと思い、まずは個人的に存じ上げていた奈良の室生寺の管長様に相談しました。

室生寺さんから文化財収蔵関係の方を紹介していただいて、話し合いを始めました。ところが今度は新型コロナウイルスの蔓延という事態になってしまいました。

これだけのものを収める収蔵庫となると、やはり億単位のお金がかかります。しかし、新型コロナウイルスが蔓延したことで色々なことが変わってしまって、正直そんなに大きいお金を動かすのは厳しい状況です。それでは今のままで、ある程度間仕切りなどを入れた上で、みなさんにお参りしていただくにはどうしたらいいか、ということで照明を入れるという考えにたどり着きました。

勝覚寺

欄間。台風15号の被害をきっかけに仏像のみならず、
こうした文化財を守る方法を模索していたという

2.仏像展での仏像の見せ方に注目して

 私は東京国立博物館や三井美術館など、仏像展があればなるべく足を運ぶようにしているのですが、そこで展示の仕方を見ると、とても小さい照明や細い照明などがあり、こういう製品はどこで手に入るのかとずっと気になっていました。また、遠くから照らしている照明を見てこんな照らし方があるのかと感心もしました。

おそらくエポックメイキングになったのは2009年に東京国立博物館で開催された興福寺の「阿修羅展」でしょうか。あれから仏像展の見せ方、ありようというものがガラリと変わった気がしています。その後開催された「空海と密教美術展」もとても見せ方を工夫されていて、強く印象に残っています。

今のような状況であるからこそ、より多くの皆さんにお参りしていただきたい、これまで目にしてきた仏像展のように本堂を照らしたい、と考えついてから、インターネットでいろいろ調べてみました。ところがお寺の新築や修復を手がける会社はあっても、照明まで考えているところはあまりありません。それに、そもそも私は照明設計とか、照明デザインという分野があること自体を全く知らなかったのです。照明専門の設計家さんがいることもその時に初めて知りました。

さらにいろいろ調べていくうち、2019年にDNライティングさんが行った大阪の三津寺さんの記事を見つけまして、これは素晴らしい、と思いました。それでDNライティングさんに直接連絡させていただいたのです。

3.さらなる落ち着いた空間を

勝覚寺には如来像と菩薩像、それに四天王がいらっしゃるのですが、如来像も菩薩像も造形がシンプルです。一方「天」と言われる天部に属する仏様は割と造形がダイナミックです。2mを超える大きさもさることながら動きがあり、持ち物や衣もダイナミックなので照明が映えると思います。

ここには熱心なファンの方もいて、定期的にいらっしゃって本堂でご祈祷をするのですがご祈祷の後、1時間くらいゆっくりされていきます。そうしたみなさんは一様に「落ち着く」とおっしゃいます。ここは古くから親しまれていた場所ですし、仏様の持つ雰囲気を感じ取った方々は、気持ちが落ち着くのかもしれません。

shyoukakuji3.jpg外陣(照明設置後)。この空間でゆっくりと過ごす参拝客も

4.照明を設置して変化した点

照明を設置するにあたって、特にこれといった希望はなかったので、基本的には現場で相談させていただいて決めていきました。難しいかもしれないと感じたのは、歩いていただけるとわかると思いますが、木陰などがないため、境内が非常に明るいことです。晴れた日などは特に、非常に明るいところから仄暗い本堂に入ってこられるので、目が慣れるまでに時間がかかるのです。鬱蒼とした木陰を歩いてきてお堂に入るのとは違うんだろうな、と思います。

お堂に入って目が慣れるまで待っていただけるといいのですが、見えないからとすぐにお堂を離れる方も中にはいらっしゃるでしょう。でも照明を変えたので、そこは少し解消されたのではないかと思っています。先日地元の方がいらっしゃってご案内したらとても良くなったとおっしゃっていただけました。

shyoukakuji4.jpg本堂外観。明るい境内から仄暗い本堂へ入った時に、
仏様をどう見せるのかが唯一の課題だった

今のところ、今後のことは考えていませんが、これから色々と工夫を加えていく可能性もあります。通常であれば法要などの他にも座禅教室やヨガなどもやっているのですが、今は毎月の定例行事を行っていません。こういう風に綺麗になったのでお参りに来ていただきたいし、それをアナウンスしたいという気持ちはありますが、今の状況だとそれも難しいでしょう。法要はオンラインで行ったりしていまして、そこももう少し充実させていきたいと思っています。

5.お寺には秘められたポテンシャルがある

 お寺は布教の場でもあり、また「教化」とも言いますが、人々をよい方向へ導く場所でもあります。ですから今後は建物や仏像も教化資源あるいは布教資源として利活用を、もっと積極的にしていくべきではないかと考えています。例えば花の寺として、境内に咲き誇るお花をきっかけにして境内に足を運んでいただくように、このお寺を活用して、地域を活性化していけたら、と思うのです。

このお寺自体、地域や自治体においての文化資源であり、歴史資源であり、観光資源でもあるので、そういう利活用をしていくという意味では、お寺はまだまだポテンシャルを秘めていると思っています。

ここだけでなく、まだまだお寺は持っている力を発揮しきれていない部分があると思います。それぞれの住職の考え方もあるのでしょうが、とにかく「ここにある」のですから。

shyoukakuji5.jpg照明が無い時の外陣(左)
shyoukakuji6.jpg照明を点灯した時の外陣(右)



6.何百年も人々の思いを受け止めてきた仏様

 このお寺自体、1000年強の歴史があります。建物は元禄時代なので大体330年くらい、お堂は鎌倉時代なので750年ほどの歴史があります。歴史資源的な面だけで見れば信仰とは離れてしまいますが、いずれにしろ何百年もの間、この仏様を守ってきてくださった人々がいるわけです。そして、この仏様に、このお寺の歴史の分だけ、座って手を合わせてきた方々がいます。人々は仏様に向かい合って祈ったり、願ったり、時には泣いたり、中には怒ったりする方もいらっしゃるでしょう。そういう数え切れない人々の様々な思いを、仏様が受け止めてきてくださった。宗派とか教え、ということではなく、人々の思いを何百年もの間受け止めてきた存在として、そこに仏様がいらっしゃるというのが非常にありがたいことですし、祈りの場としてここを未来に向けて、保っていきたいと思っています。

shyoukakuji7.jpg

人々の思いを数百年もの間受け止めてきた仏様


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