2023年照明学会照明デザイン賞「石川県立図書館 のタスク&アンビエント照明」深掘りインタビュー《前編》

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《前編》回遊しながら書籍と出会っていくこれからの時代の図書館を具現化する照明デザイン

計画・構想編

石川県立図書館は2022年、以前からあった図書館の老朽化に伴い、移転・新築された新しい図書館である。イベントなども開催できる屋内広場や飲食可能な文化交流エリアはもちろん、4階まで吹き抜けの閲覧エリアは緩やかなスロープでつながる圧巻の空間。全てにおいて新しい概念で作られたこの図書館で、照明デザインはどのように考えられたのだろうか。株式会社ライティング プランナーズ アソシエーツ ディレクターの村岡 桃子さん、シニアディレクターの窪田 麻里さんに企画構想に至るエピソードについてお話を伺った。

momoko muraoka.jpg株式会社ライティング プランナーズ アソシエーツ
ディレクター
村岡 桃子 氏
mari kubota.png株式会社ライティング プランナーズ アソシエーツ
シニアディレクター
窪田 麻里 氏



■「現代の図書館というのはなんだろう」「回遊しながら書籍と出会っていく」

村岡氏:石川県立図書館の建築は、環境デザイン研究所の仙田満先生のプロジェクトです。先生はご自身の著書の中で「回遊する空間」と表現されていて、図書館を新設するにあたり、「現代の図書館というのはなんだろう」と追究することから構成されました。
まずは「回遊しながら書籍と出会っていく」という大きなプログラムがあり、それを空間として具現化していった、という形です。仙田先生の手がけたもので、2008年に竣工した秋田県立国際教養大学の図書館があるのですが、照明の考え方としても、その発展系となるのが石川県立図書館です。

窪田氏:国際教養大学の場合は学生だけが使う施設なので規模が小さいのですが、円ではなく「半円形」というところに意義があります。書架は階段状になっていて学生が自由に本を選びつつ、読書や勉強をするための空間=キャレルがある。最下段のキャレルからは本棚が見渡せて、常に本に覆われた「知の殿堂」という空間になっています。

この大学図書館は市街地から離れたところに建っていて、24時間開館し、照明も点いています。大学のオーダーとしては、どこでも買える光源を使って欲しいというのがありました。2008年に竣工したので40Wの蛍光灯などを駆使して作っています。あとは心地よさ。昼間は外光も入って気持ちいいけれど、夜も快適な光に包まれている。夜中にレポートを書きにくる学生もいるので勉強するときは集中できるように、オープンな場所であり、籠るような場所でもあるという二点を両立できるように考えました。
経済性とメンテナンス性と機能性、それに快適性を追求するというものですが、これはうまくいったかな、と思っています。このときは限られた空間で大きくないのですが、これを石川県立図書館のように巨大化するとより公共性も増していきます。

昼間は外光が入ってきますから 照明は常時点灯していませんが、夜中はセンサーで人が来たら点灯するなど、電気代を考えると個別に制御できるようになっています。石川県立図書館とはそういった部分は違うのですが、空間の捉え方はこれがもとになっています。
仙田先生は模型を作られる方なのですが、この時もテーブルいっぱいの大きな模型を作って、「眩暈のするような空間を」とおっしゃっていました。それが印象的で、入った時に眩暈がするような光に包まれる空間になるといいな、というところからスタートしました。


■ タスク&アンビエントの最適なバランスを細やかに計画

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ーこちらの図書館は、島型の書架と静寂な読書空間を守る一般的なカタチや居方とは異なり、「交流」も意識しているように思いましたが、全体としてどんな光を演出しようと考えたのでしょうか。

村岡氏:
図書館の正面から入ったところにイベントやコンサートができる屋内広場があり、ワークショップや講演も可能なスペースが開放的に設けられています。図書館に入ると半円の書架が迎えうけますが、ここは高さの異なるすり鉢状の空間が半分ずつ合わさった形になっていて、書架の円弧に包まれたような大空間になっています。高天井から手元へのタスクライト供給は効率や快適性からも難しいので、書架や人が座るところの近くに機能照明を組み込みました。この空間構成の中で、
全体の空間体験やその場所にいる心地よさを光の配置でどう引き立てるか、というのがずっと考えていた課題でした。

このプロジェクトが終わって各所でお話しする機会をいただくのですが、タスク(機能光)&アンビエント(環境光)の最適なバランスを細やかに計画しました、ということをお話ししています。
アンビエント照明というと「出どころがわからない空間を包みこむ光」というイメージかと思います。今回DNライティングさんの器具が一番活躍したのが書架周りの照明で、これは機能の照明でもあり、空間全体の表情を作り出すアンビエント光でもあり、空間における照明の総合体として機能しているということだと思います

窪田氏:書架が置かれている、というより書架自体が建築の一部分、というようなイメージです。

ishi_A.jpg▲石川県立図書館の照明設計のダイアグラム


【後編:照明デザイン実践編】へ…

 

 

 

 

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