飯島直樹氏 Interview 前編

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飯島直樹氏 Interview 前編


profile
飯島直樹(いいじま・なおき)
1973武蔵野美術大学 造形学部産業デザイン科
工芸工業デザイン専攻卒業
1976-1985スーパーポテト
1985飯島直樹デザイン室設立
2004-2014社団法人 日本商環境設計家協会 理事長
2008-2014KU/KANデザイン機構 理事長
2011-2016工学院大学建築学部 教授

空間デザインと照明の変遷
〜パブリックスペースの新しい形

オフィス、学校、病院、レストラン、そしてショールーム。人々が集うパブリックスペースは、このところダイナミックな変化を遂げています。そうした空間を照らす照明も、もちろん変化してきています。スペース自体の変遷に加え、照明器具の変化やその役割について、70 年代から時代の移り変わりを目の当たりにしてきたインテリアデザイナーの飯島直樹先生にお話を伺いました。

目次

1.フィリップ・スタルクが使い始めた
  間接照明が90年代レストランブームを彩っていた
2.インテリアデザインに革命を起こしたシームレスライン
3.照明が「光の分布図」をつくる
4.空気が見える、空気感が深くなる
5.インテリアや照明が行動の変化を促す
  〜コモンスペースの新しいスタイル
6.学校、企業、あらゆるスペースで重なる「目的」

1.フィリップ・スタルクが使い始めた間接照明が90年代レストランブームを彩っていた

僕がインテリアデザインに携わって45年以上が経ちます。その間時代の浮き沈みを通して様々な施設を見てきましたが、ひと昔前の日本のパブリックスペースというのはとにかく「蛍光灯で明るく」という時代でした。間接照明の手法自体は、70 年代くらいから蛍光灯やベースラインを使ったものがありましたが、せいぜい壁面をふわっと照らすくらいで、下から光をあてるようになったのは90年代に入ってからですね。80年代にローボルトハロゲンでかっこよく照らすというのがありましたが、様々な種類の間接照明を一番最初に使い始めたのはフランスのインテリアデザイナーの第一人者であるフィリップ・スタルクです。この人が登場したのは80年代の末でしたが、おそらくスタルクの影響を受けたのが森田恭通さん。レストランなどの商業施設でその効果を絶大に発揮して、90年代のレストランブームを起こしたというのが主な流れだと思います。

2.インテリアデザインに革命を起こしたシームレスライン

単に暗いところを照らすだけではなく、心地よさを演出する。それが間接照明ですが、当時は光源が蛍光灯かスリムラインだったので、長さもないし、熱ももつし、10mの光をきれいに出すのは難しかったですね。並べただけだと影がでてしまうし、重ねると光が変わってしまいます。LEDが出てくるまでの間接照明は、とにかく失敗の連続でした。

当時ゼネコンの設計部だろうが照明デザイナーだろうが、間接照明を手がけたことがない人はいないけれど、みんなが失敗を繰り返しているはず。それがシームレスラインの登場で失敗に対する心配が大幅に軽減されたわけです。調光装置まで付いていて。大きさの問題はあるのでスペース確保の面で苦労はしますけれど、とにかくLEDになった時にこの辺りは大きく変わりました。シームレスラインというのがとにかく革命的だったんです。

3.照明が「光の分布図」をつくる

70 年代、まだスーパーポテトにいる頃、某照明器具販売店のショールームを手がけたのですが、このころはまだ光に対する感度がみんな鈍く、光=明るい、という時代でした。商品はダウンライト、スポット、ペンダントなど天井面につける器具がほとんどですから、60cm角グリットの板に照明器具をつけて取り替えられるようにしていました。照明器具の展示方法はこれが基本だったんですが、きれいじゃないんです。照明を選びに来た人にとって、本来ならば最適な照明の光だけが見られるようなものであるべきなんですが、他の光も混在してしまって。

現在は住宅なら住宅の背景を作って、そこにどう照明器具が生きるか、照明を含めた空間の良さを見せるようになってきました。照明が「光の分布図」をつくるということがわかってきたわけです。

4.空気が見える、空気感が深くなる

照明が果たす役割は極めて重要で、LEDができる前はハロゲンランプの光の効果を使っていました。概ねダウンライトやスポットライトでやっていたんですが、光の強弱を人工的にコントロールし切ると「空気が見える」という感覚になる。空気感が深くなるんです。これは常識的にわかってきたことです。上からこのハロゲンランプを当てると、実際には見えないけれど床に反射して下からも当たっているんです。最近手がけた工学院大学の新宿キャンパスB-ICHIでは床も壁も天井も明るいグレーにしているんですが、そこにダウンライトをつけると床面に光が反射して、全体が間接照明に包まれる感じになります。

5.インテリアや照明が行動の変化を促す〜コモンスペースの新しいスタイル


工学院大学のB-ICHIは300坪の学生ホールなんですが、それまで学生たちはテーブルで寝込んだり、ゲームをしたりして過ごしていました。それが照明やインテリアが洒落た感じになるとちょっといい格好をしてくる。おしゃれしてきますから立ち居振る舞いが良くなる。そのうちテーブルの上でパソコンを広げて勉強しだしたり、壁に黒板を作ると自然と黒板で遊び始めるんですね。数式を書いたりして。

こういうスペースはアメリカからの流れで「ラーニングコモンズ」というものですが、ツールを用意して環境を整えると、利用する学生の行動が変化するんです。これを受けて、近年オフィスや大学の環境は激変してきています。オフィスでは会議室にキッチンを設けて社員同士、また経営陣と社員などがコミュケーションをとれるようなスペースの作り方をする、それを大学にも応用してコミュニケーションスペースを作る。それに呼応するようにまた企業も変わっていく。オフィスと学校がデザインを通して影響しあい、コモンスペースの新しいスタイルが生まれてきています。

床や壁は素材にかかわらず実は柔らかく光を反射しているんですが、下からの光に包まれているという気持ちを、そこにいる人々が無自覚に味わっている。そういう光のあり方は照明デザイナーの世界では当たり前で、我々は照明の力はすごいな、と思っているんです。

6.学校、企業、あらゆるスペースで重なる「目的」

最近、人工透析のクリニックの仕事がありました。透析患者さんは週に3日、主に仕事の後の夜間に透析を受けるのですが、病院ですからパジャマに着替えています。ところが欧米の透析のクリニックを見てみると、オフィスラウンジみたいな雰囲気で全く病院には見えないんです。4〜5年前に新橋にそういうスペースを作ったら、透析を受けながらノートPCで仕事をする方なども現れた。今回の依頼はセルフ透析です。ナースがいて管理すればあとは自分で、という非常にカジュアルに透析治療を行う。日常のシーンと一体になった新しい腎臓透析のクリニックを手がけることになりました。

オフィスビルに部屋を二つ借りて、一つは透析ルーム、もう一つをセミナーや多目的なコモンスペースにするという依頼なんですが、時代はそのように変わってきているんです。そういう目で見ると、多様性や働き方の変遷もあると思いますが学校も、あらゆる企業のオフィス、ショールーム、それに学校でも、実はスペースの目的というのが重なりあって変化しているんです。空間のボーダーレス化です。

後編に続く

(取材/文・西澤美帆)

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