匠弘堂Interview 第二章 社寺建築に求められる照明づくり

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宮大工 匠弘堂インタビュー 第二章『社寺建築に求められる照明づくり』

横川 総一郎

匠弘堂代表取締役、設計、積算、営業他 現場以外の全てを担当。昭和39年京都生まれ。
大学では機械工学を専攻、家電メーカーを経て建築設計の業界へ飛び込む。
現場にて岡本棟梁らと出会い、感銘を受け、岡本棟梁に入門。
のちに3名で「匠弘堂」起業。松下幸之助氏の「志あればかならず開ける」が信条。
趣味は楽器演奏、ドライブ。辰年、O型。


匠弘堂Interview 第二章 社寺建築に求められる照明づくり

伝統的な意匠と構造を誇る日本の社寺建築ですが、電気のない時代に建てられたその建造物や文化財をどのように照らすか。劣化という問題により、これまで光が当たることがなかった分野に、LEDの特性が活かせる可能性が見えてきました。これまで、そしてこれからの社寺建築と照明について、前回に引き続き匠弘堂の代表取締役横川総一郎さんにお話しいただきました。

目次
1.社寺建築における照明の悩み
2.建築と光の知識における葛藤
3.社寺建築における照明の現状
4.社寺建築で照明に期待すること

 

 

社寺建築における照明の悩み

照明器具をつけるときに必ず問題になるのは配線も含めて「隠蔽」することです。古い日本建築のスタイルは真壁構造と呼ばれ、柱や桁などが露出する構造となっています。壁が板壁の場合はなおさらで、通常であれば配線を隠すことができないわけです。柱の中に穴を開けて通そうか、方立で隠そうか、など知恵を絞ってきましたが、建て替えや新築の場合は設計時から設備にもしっかり気を使わなければなりません。最初から考えていないと現場で配線が露出してしまいますから。

これまでの照明器具は技術的な問題もあり、デカいものが多かったんです。今回DNLさんの照明器具を見せていただいて、こんなに小さく細い器具があるのか、と驚きました。「社寺建築の中に埋め込む」という視点からすると大きな可能性を感じます。今までできなかった演出ができるはずですので、大いに期待しています。

建物と光の知識における葛藤

正直言いまして宮大工自身が電気関係の設備についてしっかり知識があるか、そうしたところに敏感か、というと知らないことだらけです。それは神社の宮司さんやお寺の住職さんも同じだと思います。歴史的な建造物では耐震や防火など防災のほうが優先的ですから、普段照明器具を意識する機会はどうしても少ない。

伝統建築は建物自体が、また内部に収められているものも文化的な価値の高い大切なものです。それを今までは暗がりの中で見ていたわけです。新しい照明技術によって見やすい環境の中で美しく、かつ傷めることなく見ることができるようになれば、お寺や神社だけでなくそれを支えている檀家さんや氏子さんなどにとっても、非常にありがたいことだと感じるのではないでしょうか。

社寺建築における照明の現状

正直、なぜここにこんなライトが? と感じることは宮大工の立場として多々あります。修理工事に入らせていただいたときに、使用していない古い照明器具を取り外して処分することから始めたりもします。そうした観点から考えると、伝統建築を所有する方々自身が今日の進化した照明器具のことを知る機会がありませんので、セミナーなどでその最先端を知ってもらうということも大切ではないかと感じます。デモンストレーションなどの機会を作っていただきたいという思いも強くなりました。

LEDは少々高額ではありますが、既存の器具から変えるべきだと思っています。お寺や神社もSDGs を考えなくてはいけない時代に来ていると思いますし。僕らのやっている「宮大工の仕事」、つまり国産の木材を使って古い建物を修復していくという日本の文化に貢献する仕事はまさにサスティナブルです。今、自分の世代だけがよければいいという考え方を変える必要があるのではないでしょうか。

もともと日本の彩色で使われる絵具や漆というのは、太陽光のとくに紫外線に対して弱いのです。お寺の大切なご本尊を例にしますと、宗教上の理由はもちろんですが、結果的に少しでも劣化を遅らせようということから秘仏にしているところも良くありますよね。技術が進歩してその劣化メカニズムがわかってくれば、紫外線を発生させずに明るく照らすことも可能になってくるでしょうし、それで劣化に対する問題が解決できれば、特に博物館などの環境でなくてもあるべき本来の場所でゆっくり拝むことが可能になろうかと。もちろん宗教上や信仰上のご理解を得られることが絶対条件ですが。

社寺建築で照明に期待すること

社寺建築の場合、照明はより自然に近い見え方、太陽光にいかに近づけるかということも大事だと思います。兵庫県の小野市にある浄土寺浄土堂という国宝の建物があります。これを企画した人が重源(ちょうげん)という東大寺を復興したお坊さんなのですが、あの大きな大仏を覆う巨大な建物を作るのに、従来の建て方ではすぐに倒壊してしまいますので、中国の宋から最新技法を持ってきて、東大寺を建てる前に実験的に作ったのがこの浄土寺と言われています。大仏様(だいぶつよう)という建築様式で建てられていますが、実はここで重源と仏師の快慶が光の演出を入れているんです。光を意識して建築に取り入れた例は日本ではかなり珍しいのですが、ここでは「極楽浄土」を光とセットで空間演出しているわけです。阿弥陀三尊像の背面が真西を向いていて、その全面格子窓から西日が入り金色の仏像を後ろから照らし出します。

夕方になると西日が背面から逆光で当たり、正面からはまるで阿弥陀如来様が天から降りてきたように表現されている。鎌倉時代に、こういうことを実現した人がいたんです。

しかし後の世の建築では同じことを表現することはなく、むしろ暗くする方向になります。例えば安土桃山時代の千利休が生み出した茶室建築では、日本人は小さな窓で小さい部屋で、かすかな光で陰影を楽しむという方向になっていきましたが、僕は鎌倉時代という政治的文化的に大転換した時代に光の当て方を考えた日本人がいた、ということに思いを馳せるんですね。今の舞台演出は後ろから光を当てるものが多く見られますが、それを見るたびに浄土寺を思い出すんです。

実現できるかどうかわかりませんが、例えば仏像の光背部分をLEDの光とミックスして表現すれば美しいかも。繊細な光背の彫刻と光が合わさったら、非常に神々しい綺麗なものが出来上がるのではないかと思います。

僕らは建築をする立場ですが、やはり造って終わりではなくて見て感じて欲しいんです。隅々まで感じて綺麗だな、と思っていただきたい。それを助けてくれるのが照明じゃないかと。

照明をお仕事にされている方にはこの浄土寺は是非見ていただきたいですね。今日の文明が発達する以前では考えられなかったことでしょうが、もし信仰上のハードルが許されるならば、文化財としての見せ方を一変させる時代が来てるんじゃないかと思うんです。



(取材・やすあきを、文・西澤美帆)

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