調光の種類とは?LED照明の制御方式の違いや仕組みをまとめて解説
広く普及しているLED照明の調光方式にはいくつかの種類があり、それぞれ仕組みや特徴が異なります。
採用する制御方式を誤ると、「思ったように明るさが調整できない」「相性が合わず点灯しない」といったトラブルに繋がることも少なくありません。
そこで本記事では、LED照明における調光の種類や制御方式の違いについて、わかりやすく解説します。さらに、適切な方式を選ぶためのポイントや実際の導入事例もあわせてご紹介しますので、照明選びの参考としてぜひご活用ください。
目次
1.照明に使用される調光器とは?
2.LED調光器の種類とそれぞれの特徴
3.どの種類を選ぶべき?調光器選びのポイントとは
4.【種類別】調光器の導入事例
5.用途に合わせた調光方式で理想の光環境を実現
6.多様な空間でお客様のニーズを満たすDNライティング
照明に使用される調光器とは?
西原商会本社ビル CORE(4階オフィス)
(撮影:針金建築写真事務所)
調光器とは、照明の明るさを自由に調整できる装置のことを指します。電気の流れを制御することで光量を増減させる仕組みで、空間や用途に合わせた最適な照明環境を作り出すことができます。
例えば家庭では、リビングでリラックスしたいときは明かりを落とし、読書や勉強の際にはしっかり明るくするといった使い分けが可能です。
また、飲食店やホテルなどの商業施設でも、時間帯やシーンに合わせた演出ができる調光は欠かせません。さらに、用途に応じて光量を抑えることで、電力消費を削減できる効果も期待できます。
このように、調光器は快適さと経済性、そして演出効果を同時に実現できるため、さまざまな場所で広く採用されています。
LED調光器の種類とそれぞれの特徴
省エネで長寿命というメリットから、近年主流となっているLED照明。しかし「LED調光器」と一口に言っても、電流の制御方式によって仕組みが異なり、調光範囲や対応できる器具などに違いがあります。
ここからは、LED調光器の代表的な4つの調光方式とその特徴について、わかりやすく解説していきます。
調光の種類1:位相制御方式
まずは、従来から一般的に利用されてきた「位相制御方式」をご紹介します。
位相制御方式とは、交流電源の電圧波形を一部カットし、供給する電力量を抑えることで調光を行う方式です。トライアックなどの半導体スイッチを用いて波形を切り取り、光の出力を変化させます。
家庭用のダウンライトやシーリングライトなどで使用されており、配線がシンプルで施工が容易というメリットがあります。また、既存の電源ラインにそのまま組み込めるため、後付けで導入しやすく、住宅や店舗など幅広い環境に対応できることも特徴のひとつです。
対応するLED器具を用いれば比較的導入しやすい点がメリットですが、他の制御方式と比べると電源の電流を直接制御するため電圧変動の影響を受けやすく、ちらつきやノイズ(うなり音)が発生することがあります。
このことから、位相制御方式は、導入コストや施工性を重視する場合に適した制御方式だと言えるでしょう。
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調光の種類2:逆位相制御方式
続いて紹介するのは、逆位相制御方式です。交流電源の電圧波形の後半部分をカットして電力を調整する制御方式のことを、「逆位相制御方式」と呼びます。
通常の位相制御が波形の立ち上がり部分を削るのに対して、逆位相制御は波形の後ろ側を削るイメージです。位相制御よりも滑らかに電力をコントロールできるため、ノイズ(うなり音)が抑えられます。住宅やホテル、寝室などに適しています。
逆位相制御は既存の交流環境に導入しやすく、住宅や店舗などでの簡易な調光であれば、充分に実用的な制御方式です。
ただし、より滑らかな明るさ変化を求める場合には、PWM制御方式のほうが適しているため、照明計画に合った制御方式を選ぶようにしましょう。
調光の種類3:PWM制御方式
LED照明の制御方式の中で最も汎用性が高く、さまざまな場所で採用されているのが「PWM制御方式」です。
PWMとは「Pulse Width Modulation(パルス幅変調)」の略で、その仕組みは「点灯と消灯を高速で繰り返し、その点灯時間の比率を変えることで明るさを調整する」という非常にシンプルなものです。
人間の目には残像効果があることから、数百Hz以上の高速点滅は「ちらつき」として認識されません。そのため、点灯している時間の割合(デューティ比)を変化させるだけで、視覚的には連続的な調光として感じられるのです。
例えばデューティ比が50%なら、入力の半分の時間だけLEDが点灯しているため、見た目には明るさが半分程度に感じられます。100%なら最大の明るさ、10%なら非常に弱い明るさという風に自在に制御できます。
この仕組みを利用した「PWM制御方式」は信号線式の調光方式で、位相制御や逆位相のように電源線の電流を直接制御するのではなく、別の信号線を制御することにより、電源ノイズの影響を受けない安定した調光が特徴です。
また、電源線と分けることで、照明の使用台数が多い大規模の調光制御が可能になるため、商業施設等に適しています。
つまり、PWM制御方式は小規模の空間から大規模な施設まで、光の質や演出性を優先したい場合には非常に有効な制御方式だと言えるでしょう。
関連記事:LEDのPWM調光方式とは?仕組み・特徴・導入時の注意点まとめ
調光の種類4:DALI制御方式
国際規格に基づくデジタル制御方式が、「DALI制御方式」です。DALI(Digital Addressable Lighting Interface)制御方式は単なる調光方式ではなく、照明器具と制御デバイス間での双方向デジタル通信を可能にする制御システムを指します。
例えば、点灯している、故障しているなどの情報が集約できるため、大規模施設において集中管理が可能です。
DALIシステムは、主に「制御ギア(LEDドライバなど)」「インプットデバイス(スイッチやセンサー)」「アプリケーションコントローラー(制御ロジック)」の3つの要素で構成され、これらがDALIバス上で通信し、個別制御・グループ制御・シーン設定などを実現することで、滑らかな調光を可能にします。
オフィスビル・空港・ホテルなどの大規模空間で広く採用されている方式で、汎用性や拡張性が非常に優れている他、メーカー間の相互運用性が高い点も大きなメリットです。
DALI制御方式は、デジタル信号によって、照明を個別またはグループ単位で制御できる高度な照明制御システムです。信号通信に専用の制御線を必要とするため、初期導入コストや設計工数はやや高くなりますが、システムの拡張性や制御の自由度は他の制御方式に比べて優れています。
よって、DALI制御方式は、コストよりも照明環境の品質・効率・柔軟性を重視する環境において、最も効果を発揮する制御方式だと言えるでしょう。
どの種類を選ぶべき?調光器選びのポイントとは
Wolfgang’s Steakhouse by Wolfgang Zwiener
(撮影:NOMURA DESIGN & ENGRG. (S) PTE LTD)
調光器を選ぶ際は、使用環境や照明器具との相性にも注意が必要です。適切な調光環境を実現するためにも、以下のポイントを必ず確認しておきましょう。
- 使用する照明器具に合っているかを確認する
- 調光器の負荷容量に注意する
- 調光範囲(どこまで暗くできるか)を確認する
中でも特に注意したいのが、調光器の対応可能な負荷容量です。
調光器は扱える電力に上限があり、その上限は製品ごとに異なります。もし負荷容量の上限を超えて照明器具を接続すると、調光が正常に行えなかったり、ちらつきや誤作動の原因になったりすることも珍しくありません。
たとえLED照明器具1台当たりの消費電力が小さくても、複数台をまとめて制御する場合は合計の負荷容量が上限を超えないように、照明計画の段階で容量に適した製品を選ぶことが重要です。
調光器を選ぶ際は、制御方式の特徴だけで考えるのではなく、使用する照明器具や調光範囲も含めた総合的な判断が欠かせません。事前にしっかりと検討を重ねることで、安全かつ快適な光環境を実現できるでしょう。
【種類別】調光器の導入事例
ここからは、調光器の制御方式ごとに実際の導入事例をご紹介します。どのような照明計画に適しているのかをイメージしながら、導入検討の際の参考としてご覧ください。
PWM制御方式の導入事例:西原商会本社ビル CORE
弊社DNライティングで最も多く導入している制御方式が「PWM制御方式」です。LED照明を最大限に活かしながら、繊細な光の表現も可能にするため、オフィスビルや商業施設、展示空間など、調光が重視される現場で高く評価されています。
その導入事例のひとつが「西原商会本社ビル CORE」です。同施設は複数の部署が集まる本社ビルであり、異なる業務空間が共存することから、「多様性」をテーマに照明計画を設計しました。
西原商会本社ビル CORE(3階オフィス)
(撮影:針金建築写真事務所)
PWM制御によってちらつきのない安定した光を実現し、快適な執務環境と空間演出を両立。さらに、3~5階の執務室は、同じ照明器具を異なる模様に配置することで、同照度を確保しつつ個性を持たせました。
このように、PWM制御方式は光の表情を細やかに表現したい現場や、快適性と演出性の両立を求める空間におすすめの調光方式です。
※使用製品「TRE2-APD」は、後継製品の「TRE2-APL」をご参照ください。
| 製品名 | 建築化照明 TRE2-APL |
|---|---|
| 特徴 | ・TRIM LINE LED照明器具(トリムライン) ・スクエア型カバー ・調光兼用型 ・コンパクト型 ・LEDモジュール交換型 ・埋込み取付け可能(※最小施工寸法をカタログ・取説で要確認) ・JCD PRODUCT OF THE YEAR 2017 グランプリ受賞 ・Ra96(高演色)、Ra98(自然光)も受注生産可 ・電源内蔵 ・電源送り機能あり |
PWM/DALI制御方式の導入事例:22 PIECES
続いては、京都市のホテル「22 PIECES」での導入事例をご紹介します。同ホテルではPWM制御方式を採用していますが、使用している照明器具「HAS-LED-FMZ」は、PWM制御方式・DALI制御方式のどちらでも対応可能な製品となっています。
22 PIECES
(撮影:繁田諭写真事務所)
22 PIECESでは、くつろぎやすい空間を実現するために、客室内の照明を低色温度で統一。さらに、高い光束値からきめ細かに明るさを調整できる0-100%調光型の「HAS-LED-FMZ(※生産終了)」を採用し、さまざまな明るさを実現できるように配慮しました。
デザイン性と快適性を両立したこの照明計画は、LED照明による心地良い光環境づくりの可能性を感じさせる好例と言えるでしょう。
※使用製品「HAS-LED-FMZ」は、後継製品の「TRM-FMZ」をご参照ください。
| 製品名 | 建築化照明 TRM S-FMZ |
|---|---|
| 特徴 | ・TRIM LINE LED照明器具(トリムライン) ・スクエア型カバー ・0%-100%調光兼用型(PWM / DALI 対応) ・4000lm (1500サイズ) ・LEDモジュール交換型 ・埋込み取り付け可能(※最小施工寸法をカタログ・取説で要確認) ・電源内蔵 ・電源送り機能あり |
| 製品名 | 建築化照明 TRM D-FMZ |
|---|---|
| 特徴 | ・TRIM LINE LED照明器具(トリムライン) ・ドーム型カバー ・0%-100%調光兼用型(PWM / DALI 対応) ・4000lm (1500サイズ) ・LEDモジュール交換型 ・埋込み取り付け可能(※最小施工寸法をカタログ・取説で要確認) ・電源内蔵 ・電源送り機能あり |
位相制御方式の照明器具
弊社DNライティングでは、PWM制御やDALI制御のみならず、位相制御方式の照明器具も取り扱っています。
一般的な住宅や小規模な店舗など、既存の配線環境を活かして手軽に調光を導入したい場合に適しており、コストを抑えながら明るさのコントロールが可能です。
手軽に調光を取り入れたい、あるいは既存設備を活かして照明環境を改善したい場合には、位相制御方式の照明器具も検討することをおすすめします。
| 製品名 | 建築化照明 TRE2-ADB |
|---|---|
| 特徴 | ・TRIM LINE LED照明器具(トリムライン) ・スクエア型カバー ・位相調光型 ・コンパクト型 ・LEDモジュール交換型 ・埋込み取り付け可能(※最小施工寸法をカタログ・取説で要確認) ・電源内蔵 ・電源送り機能あり |
また、弊社DNライティングの調光用器具や別置き電源装置は、PWM制御・位相制御・DALI制御など、多くの他社メーカーの調光器との動作確認を実施しております。互換性の面でも安心して導入をご検討ください。
なお、弊社HPでは、他社の適合調光器について詳しく検索できますので、ぜひこちらもご活用ください。
用途に合わせた調光方式で理想の光環境を実現
今回は、LED照明における調光の種類や制御方式の違い、そして選び方のポイントについてご紹介しました。
位相制御方式・逆位相制御方式・PWM制御方式・DALI制御方式など、調光の制御方式によって仕組みや特性が大きく異なります。どの制御方式を選ぶかで得られる光量や操作性、導入コスト、拡張性も変わるため、これらを総合的に考慮したうえで照明計画を立てることが欠かせません。
例えば、家庭用や小規模空間では位相制御や逆位相制御が手軽で扱いやすく、オフィスや商業施設など、より高度な照明制御を求める場合には、PWM制御やDALI制御がおすすめです。
それぞれの特徴を正しく理解し、使用環境や目的に合った調光方式を選ぶことで、快適で美しい光環境を実現できるでしょう。
弊社DNライティングでは、色温度・配光・明るさの調整や設置位置・角度の工夫によって、空間の印象をシミュレーションすることが可能です。店舗設計や照明計画の際には、内装材のサンプルや照明器具の選定をもとに、より現場に近い環境での検討ができます。
「照明にこだわった施設を目指したい」「照明選びで失敗したくない」という方はぜひお立ち寄りください。
多様な空間でお客様のニーズを満たすDNライティング
私たちDNライティングは、業務用照明の専門メーカーです。
現在、百貨店・総合スーパー・ブランドショップ・専門店などの商業施設をはじめ、オフィスビル、ホテル、病院、学校、美術館、マンション、寺社仏閣にいたるまで幅広くこだわりの光(ヒカリ)を表現できる照明メーカーとしてご用命を頂いております。
- 様々な空間に対応する多彩な品揃え
- お客様のニーズを実現するカスタマイズ力
- 多品種と高品質を支える自社生産体制
- 照明その他電気工事の請負・設計監理
照明の役割がますます多様化し、その機能への期待が高まっている中、小空間から大空間まで様々なステージで対応できる豊富な商品を揃え、お客様のニーズにきめ細かく対応する照明専門メーカーを目指しております。ぜひお気軽にご相談ください。
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