飲食店照明のポイントと事例|居心地の良い空間を作るコツ
飲食店の照明デザインは、料理の見栄えを引き立てるだけでなく、居心地の良さにも大きく影響します。
間接照明やライン照明を効果的に取り入れることで、柔らかく広がる光が空間を包み込み、料理を美しく演出すると同時に、来店者がリラックスできる雰囲気を作り出せるのです。
この記事では、飲食店照明を選ぶ際のポイントや設計上の注意点、実際の導入事例を交えながら、居心地の良い空間作りと料理の魅力を両立させる方法を解説します。
目次
1.飲食店における照明の重要性
2.シーン別に考える飲食店照明のポイント
3.事例で見る飲食店照明デザイン
4.飲食店における照明器具の選定と設計のコツ
5.居心地と美味しさを演出する飲食店照明の工夫
6.多様な空間でお客様のニーズを満たすDNライティング
飲食店における照明の重要性
BIG BABY ICE CREAM
(撮影:麻生健一朗)
照明は空間演出だけでなく、料理そのものの見え方にも大きく影響します。お客様が「美味しそう」と感じるかどうかは、光の色や質、照らし方に左右されることも少なくありません。
ここからは、飲食店照明において料理の魅力を最大限に引き出すための、色温度や演色性の考え方について解説します。
第一印象を決める「光の演出」
お客様が店舗に入った瞬間に感じる印象は、照明が大きく左右します。エントランスや外観では、ライン照明やプロファイル照明を使って「入りやすさ」と店の世界観を伝えることが重要です。
明るさや色温度だけでなく、光の当たり方や影の出方を工夫することで、空間に奥行きや立体感を与え、非日常的な雰囲気を演出できます。
また、ベンチ席や壁面のアッパー照明を活用すれば、視線を誘導しながら空間の広がりを感じさせることが可能です。光の演出によって、来店時の第一印象を印象的かつ心地よく仕上げることができます。
料理の魅力を引き出す色温度と演色性
照明は、料理の見え方にも大きく影響します。色温度は光の色合いを示す指標で、暖色系(2400K〜3000K)の光はリラックス感や高級感を演出し、寒色系の光はシャープでクールな印象を与えます。
演色性(Ra値)は、光の下で物の色がどれだけ自然に見えるかを示す指標で、高演色(Ra90以上)の光を使えば、料理の色味を忠実に再現でき、見た目の美味しさを最大限に引き出せます。
例えば、赤いトマトを照らす場合、演色性の高い光では鮮やかな赤色が際立ち、料理全体の魅力を高めます。逆に演色性の低い光では、色味がくすみ、料理の印象を損なうことがあります。
照明器具の色温度や演色性を適切に選び、光源の納まりや調光も組み合わせることで、料理をより美味しく、空間全体の雰囲気に沿った演出が可能です。
シーン別に考える飲食店照明のポイント
Wolfgang’s Steakhouse by Wolfgang Zwiener
(撮影:NOMURA DESIGN & ENGRG. (S) PTE LTD)
飲食店の照明は、空間や用途ごとに計画することで、料理の魅力を引き出すだけでなく、お客様に居心地のよさや非日常感を提供できます。
ここでは、エントランスから客席、カウンターまでの主要シーンごとのポイントを解説します。
エントランス・外観照明で「入りやすさ」を演出
店舗の入り口や外観は、お客様に最初の印象を与える重要な場です。暖色系の光を用いれば温かみを演出でき、自然に「入りやすさ」を伝えられます。
一方で、低色温度×高演色性の光や寒色系の光を用いれば、上質感や洗練された印象を強調でき、独自の「世界観」を表現可能です。
さらに、ライン照明やプロファイル照明のように建築と一体化した光を活用することで、店の外観に個性を持たせ、他店との差別化につながります。
ベンチ席・壁面アッパー照明で空間に奥行きを
ベンチ席や壁面のアッパー照明は、視線を誘導して空間に奥行きを生む効果があります。特に光源が見えない間接照明を用いると、柔らかく伸びる光が落ち着きと開放感を両立させます。
壁面の仕上げ材がタイルや漆喰、木板などの場合、光の向きや拡がりを工夫することで、素材がもつ陰影や質感を際立たせることができます。
さらに、グレア(眩しさ)を抑えるためには、光源を直接見せない納まりや器具選定が重要であり、意匠設計者との調整も欠かせません。
カウンター上部照明で料理をおいしく見せる
カウンターは、料理や作り手の魅力を直接伝えるコミュニケーションの場です。上部照明はRa90以上の高演色性の光を選ぶことで、食材本来の色や質感を引き立てます。
配光も狭角・広角を使い分け、カウンター面に適切な照度を確保することが重要です。また、客席からの眩しさを抑える器具の納まりを検討する必要があります。
カウンター下部フットライトで落ち着きと誘導性を両立
カウンター下部に設置するフットライトは、足元の誘導と非日常感の演出を両立させます。間接光として配置することで、落ち着いた空間演出が可能です。 床材に応じて光源の映り込みや反射を考慮することもポイントです。
光沢のある素材の場合は、LEDの粒感が出にくい器具を選ぶ、光が映り込まない設置向きや遮光板を用意するなどの工夫が必要です。
事例で見る飲食店照明デザイン
飲食店の照明は、ただ明るさを確保するだけでなく、空間の雰囲気や居心地、料理の見え方にも大きく影響します。
ここでは、実際の導入事例をもとに、ライン照明や間接照明などの使い方と空間演出のポイントをご紹介します。
重慶飯店|壁面アッパー照明(SCFシリーズ)
重慶飯店では、壁面アッパー照明にSCFシリーズを採用しています。
重慶飯店 本館
(撮影:佐藤久)
SCFシリーズは小型ながら明るさを確保でき、光源が見えない間接照明として空間の奥行きと落ち着きを演出するのに最適です。
重慶飯店 本館
(撮影:スタジオマップ/佐藤久)
壁面のテクスチャーや色味を自然に引き立てつつ、視線誘導による空間演出も可能です。
※使用製品はすでに生産が終了しております。後継品にてご検討ください。
【使用製品】建築化照明 SCF-LEDN-APD
【後継品】建築化照明 SCF-LEDN-APL
| 製品名 | 建築化照明 SCF-LED-APL |
|---|---|
| 特徴 | ・Seamlessline LED照明器具(シームレスライン) ・調光兼用型 ・コンパクト型 ・ワイド配光タイプ ・PWM調光 ・電源内蔵 |
某商社|壁面アッパー照明(SCFシリーズ)
飲食店では、客席に直接まぶしい光を当てるよりも、天井や壁に光を反射させて空間全体を柔らかく照らすアッパー照明が効果的です。
某商社
(撮影:スタジオマップ 前田誠士)
例えば、エントランスや客席エリアを天井を照らすことで、実際の天井高さ以上に広がりを感じさせ、落ち着いた雰囲気を演出できます。
こちらの導入事例でも、間接光が室内を包み込み、居心地のよい空間が実現されています。
※使用製品はすでに生産が終了しております。後継品にてご検討ください。
【使用製品】建築化照明 SCF-LEDN-APD
【後継品】建築化照明 SCF-LEDN-APL
新宿東宝ビル|エントランスライン照明(プロファイル)
新宿東宝ビル1Fの商業通路では、飲食店が並ぶエリアにライン照明を導入。天井面に沿って光を走らせることで、通路全体を明るく導きつつ、店舗ファサードの魅力を引き立てています。
新宿東宝ビル 1階商業共用通路
(撮影:荒木文雄)
この空間演出には、PFMシリーズが使用されています。直線的でシャープな光が、来訪者を自然に誘導しながら通路全体に明るさと開放感を与えています。
| 製品名 | プロファイルシステム PFM |
|---|---|
| 特徴 | ・最長10mまで ・埋込み取付け可能 ・吊り下げ使用も可能 ・切断可能 |
LIGHT GATE LOUNGE|ブース席照明(TRE2シリーズ)
LIGHT GATE LOUNGEのブース席では、落ち着いた空間を演出するために間接照明が導入されています。天井や壁面に沿って柔らかく光を回すことで、座席ごとの居心地の良さを高めつつ、料理やテーブルのディテールを美しく見せています。
使用されたTRE2シリーズ(アクリルカバー付き)は、壁面・天井・床の意匠に沿わせた納まりで設置されており、空間の統一感を演出しながら明るさと美観を両立させます。アクリルカバーによって光がやわらかく拡散され、直接光の眩しさを抑えつつブース席全体を均一に照らすことが可能です。
| 製品名 | 建築化照明 TRE2-ADB |
|---|---|
| 特徴 | ・TRIM LINE LED照明器具(トリムライン) ・スクエア型カバー ・位相調光型 ・ハイパワー・コンパクト型 ・LEDモジュール交換型 ・埋込み取付け可能 ・Ra96(高演色)、Ra98(自然光)も受注生産可 ・電源内蔵 |
| 製品名 | 建築化照明 TRE2-APL |
|---|---|
| 特徴 | ・TRIM LINE LED照明器具(トリムライン) ・スクエア型カバー ・調光兼用型 ・ハイパワー・コンパクト型 ・LEDモジュール交換型 ・埋込み取付け可能 ・JCD PRODUCT OF THE YEAR 2017 グランプリ受賞 ・Ra96(高演色)、Ra98(自然光)も受注生産可 ・電源内蔵 |
| 製品名 | 建築化照明 TRE2-APT |
|---|---|
| 特徴 | ・TRIM LINE LED照明器具(トリムライン) ・調光調色型(5000K〜2800K) ・調光調色型(5000K〜2400K)受注品 ・4000lmクラス ・LEDモジュール交換型 ・埋込み取付け可能 ・Ra98(自然光)も受注生産可 ・電源内蔵 |
飲食店における照明器具の選定と設計のコツ
飲食店の照明は単に明るさを確保するだけでなく、空間の印象や料理の魅力を引き出す重要な要素です。器具の種類、配置、色温度や演色性、光の納まりまでトータルで考えることが大切です。
色温度と演色性を意識
暖色系(2400K〜3000K)をベースに店舗コンセプトに合わせて調整することで、リラックス感や高級感を演出できます。
さらに、Ra90以上の高演色タイプを選ぶことで、料理や食材の色味を自然に、美味しそうに見せることが可能です。
グレア対策と光の納まり
光源が直接見えない納まりや、見えても眩しくない器具を選定することが重要です。プロファイルやSCFシリーズなどの薄型・小型器具は、光の存在感を抑えながら十分な明るさを確保できます。
また、調光機能を併用することで、明るさ調整と眩しさの抑制を両立させることができます。
器具の組み合わせと配置
壁面アッパー照明には明るさを重視したTREシリーズを用い、天井間接照明には小型ながら十分な明るさを確保できるSCFシリーズや、ダウンライト・ペンダントを組み合わせることで、空間に奥行きと立体感を演出できます。
また、ライン照明や埋め込み照明を壁面・天井・床の意匠に沿って配置することで、空間の統一感を保ちながら効果的な演出が可能です。
設計上の注意点
照明設計時には、光源位置と仕上げ材の関係を事前に確認することが重要です。
素材の艶やマット感によって光の反射・拡散が変化するため、空間ごとの明暗のグラデーションを意識しましょう。どこを強調するか、どこを抑えるかを決めることで、光のリズムが生まれ、印象的な空間を作ることができます。
また、コーブ照明やコーニス照明の造作寸法・開口寸法にも注意し、光が伸びすぎず柔らかく広がるよう工夫しましょう。
加えて、長寿命LEDを使用する場合でも、点検や交換、清掃のしやすさを考慮した設計にしておくことが大切です。
居心地と美味しさを演出する飲食店照明の工夫
今回は、飲食店における照明の特徴や活用のポイントについてご紹介しました。
飲食店の照明は、料理の美味しさを引き立てるだけでなく、来店時の第一印象や居心地の良さを左右する重要な要素です。特に埋め込み型や間接照明を用いることで、器具を目立たせず、空間全体をすっきりと上質に見せることができます。
さらに、ベンチ席背面のアッパー照明で奥行きを演出したり、カウンター上部の照明で料理を鮮やかに見せたりと、部位ごとに役割を持たせることが可能です。カウンター下部のフットライトを組み合わせれば、足元の誘導性と非日常感を両立できます。
ただし、製品ごとに光の色味や眩しさ(グレア)の抑え方が異なるため、仕上げ材や空間コンセプトに合わせた器具選定が欠かせません。明るさ・色温度・演色性を踏まえ、店舗設計者と照明メーカーが連携することで「居心地が良く、料理が映える空間照明」を実現できます。
弊社DNライティングでは、色温度・配光・明るさの調整や設置位置・角度の工夫によって、空間の印象をシミュレーションすることが可能です。店舗設計や照明計画の際には、内装材のサンプルや照明器具の選定をもとに、より現場に近い環境での検討ができます。
「照明にこだわった飲食店を目指したい」「照明選びで失敗したくない」という方はぜひお立ち寄りください。
多様な空間でお客様のニーズを満たすDNライティング
私たちDNライティングは、業務用照明の専門メーカーです。
現在、百貨店・総合スーパー・ブランドショップ・専門店などの商業施設をはじめ、オフィスビル、ホテル、病院、学校、美術館、マンション、寺社仏閣にいたるまで幅広くこだわりの光(ヒカリ)を表現できる照明メーカーとしてご用命を頂いております。
- 様々な空間に対応する多彩な品揃え
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照明の役割がますます多様化し、その機能への期待が高まっている中、小空間から大空間まで様々なステージで対応できる豊富な商品を揃え、お客様のニーズにきめ細かく対応する照明専門メーカーを目指しております。ぜひお気軽にご相談ください。
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