照明の2020年問題とは?今からLED照明へ切り替えるメリット
「照明の2020年問題」とは? 今からLED照明へ切り替えるメリット
目次
1.蛍光灯が手に入らなくなる!? 「照明の2020年問題」とは?
2.今が替え時?蛍光灯・白熱電球からLED照明へ変更するメリット
3.LED照明へ切り替える際に押さえておきたい注意点
4.店舗やオフィスの照明を入れ替える際の流れ
5.LED照明を導入するなら空間の照明計画も練り直そう
1.蛍光灯が手に入らなくなる!? 「照明の2020年問題」とは?
東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年は、照明の世界においても大きな転換点を迎える年になります。
経済産業省が打ち出した「新成長戦略」「エネルギー基本計画」によりますと、これまで照明器具として使われていた蛍光灯器具や水銀燈の生産を2020年中に終え、高効率次世代照明といわれるLED照明や有機EL照明の生産に100%切り替えることを目指す、としています。
要するに、市場に新しく出回る照明器具を、2020年からは全てLEDや有機EL照明に切り替える、ということです。
こうした動きの背景には、政府が主導する環境への配慮やエネルギー戦略、そして「水俣条約」の発効が挙げられます。「水俣条約」とは水銀に関する取扱いを国際的に定めた条約で、2017年8月に発効されました。水銀の採掘から使用、廃棄に至るまでを規制し、人体に有害である水銀の利用を世界的に削減していくことを目的としています。
一般社団法人日本照明工業会も「水俣条約」の発効を受けて、水銀使用製品である蛍光灯器具や水銀燈の製造を2020年中に終了することを目標として打ち出しています。
ちなみにDNライティング株式会社は2016年3月に蛍光灯器具の出荷を止め、全てLED照明に切り替えています。
水銀利用に対する厳格な規制、東日本大震災以降の省エネ志向、そして地球温暖化を抑制する熱源の削減が求められる中、2020年中に照明器具を出荷ベースで100%LED化すること、それが「照明の2020年問題」です。そして、世の中に残っている蛍光灯や白熱電球などの照明器具をどんどん入れ替えて行き、2030年には全ての照明器具がLEDに入れ替わる、というのが大きな目標です。
蛍光灯・白熱電球からLED照明への転換への流れが今後ますます加速する。2020年はそういう年なのです。
2.今が替え時?蛍光灯・白熱電球からLED照明へ変更するメリット
まず、LED照明に切り替えるメリットして一番に挙げられるのは、LED照明の寿命の長さです。
蛍光灯や白熱電球は、LEDに比べると寿命が短いです。蛍光灯の寿命は、器具やランプの長さ、使用状況によっても変わりますが、トータルの点灯時間でみますと一般的には1万2000時間から長いもので2万時間といわれています。家庭でよく使われているようなサークライン型の蛍光灯の寿命はおおよそ2万時間くらいですが、LEDはおよそ4万時間で、ほぼ倍です。
一方、白熱電球の寿命は1000時間から2000時間で、単位が一桁違うほど寿命が短いです。
家庭だとお手洗いや玄関に電球が使われることが多いので、つけっぱなしにすることはあまりないとは思いますが、使用時間によって、電球は3カ月くらいで切れてしまうこともあります。
LED照明は寿命が長いので、交換の頻度や手間が大幅に減ります。高所など設置する場所によっては、10年以上交換する必要がなくなることも考えられますので、交換に必要な足場代などの費用が削減できる。これもLED照明に切り替える大きなメリットです。
次に消費電力ですが、例えば60Wの白熱電球だと60Wの電力を消費するのに対し、LEDだと7Wぐらい。電気代が10分の1ぐらいになるイメージです。
電球とLED照明の電気代を4万時間使用したとして比較すると、LEDを使うことで約86%のコスト削減、
1灯につき、50,436円マイナスになります。
さらにLED照明のメリットとしては、熱の発生量が電球や蛍光灯に比べて少ないことが挙げられます。
例えば、白熱電球は電気を熱に変えて光を放つため、フィラメントの部分では3000℃程度の熱が発生していて、ランプのガラス表面でも100℃~180℃くらいまで熱くなります。ハロゲンランプに至っては、ガラス部分が1000℃近くの高温に耐えられる石英ガラスを使っていることからわかるように、表面温度が非常に高く、触れば危険なほど熱くなります。温度がそこまで上がらないと言われている蛍光灯でも点灯時、両端のフィラメント部分が70℃~80℃に上昇します。
一方、LED照明の熱の発生は、一般的には50℃程度です。照明を設置した部分の熱による劣化も防ぐことができますし、安全という観点からもLED照明は優れていると言えます。
そして、照明の熱が少ない分、夏季の冷房効果が変わってきます。空調の効率が上がり、ひいては電気代が削減され、温暖化の抑制につながります。LED照明は現在、電球型、蛍光灯型など様々な形状の製品が作られています。また、明るさや色、配光(各方向に対する光の強さ)も、電球や蛍光灯とほぼ同レベル、あるいはそれ以上の製品も数多く作られていますので、光の質といった面からも何ら遜色はありません。
3.LED照明へ切り替える際に押さえておきたい注意点
LED照明を導入する場合、イニシャルコストの問題があります。
白熱電球はひとつ、100円程度で買えたりしますが、LED電球は安くなったと言えども1000円くらい、メーカーによってはもっと値段がする場合もあります。とはいえLEDが出始めた当時はひとつ、3000円、5000円という価格だったので随分手に入れやすい価格にはなってきています。
LED照明導入時のイニシャルコストは、確かに電球や蛍光灯を使用していたときよりは上がりますが、先に触れたように電気代の大幅な削減や交換・買い替えの費用軽減によって吸収することができ、ある分岐点を境にどんどんランニングコストが浮いてくるというメリットがあります。
ご家庭はもとより、照明器具を数多く使っているオフィスや巨大なビルだと、その電気代は「ちりも積もれば山となる」で大変なものになります。ですので、LED照明に切り替えると電気代のランニングコスト削減の効果が大きく現れます。
こちらがDNライティング製品の試算表です。間接照明シームレスライン蛍光灯器具からLED器具に切り替えた場合、初期費用をどれくらいの年数で吸収できるかがわかります。分岐点以降は蛍光灯使用時に比べて、電気代が削減され続けるわけですからメリットが大きいことが分かります。
また、オフィスやビルなど数多くのLED照明を一度に切り替える場合、まとまったオーダーがあると製品材料の確保や生産の納期に時間がかかることがあり、切り替えについては計画的に行うことが必要です。
4.店舗やオフィスの照明を入れ替える際の流れ
まずは予算のご相談~見積を取る、ということからになります。必要であれば、現場での調査を行います。大きな建築物の場合、一度にLED照明に切り替えるのは予算的にも大変です。当社製品をお使いいただいている大手ディベロッパー様がLED照明に切り替える際も、一度に切り替えるということはできませんから、フロアごとに進める計画を立てて行いました。ぜひ計画段階からDNライティングにご相談いただくことをお勧めします。現在ご使用の蛍光灯器具に最適なLED器具の選定や方法などをご提案させていただきます。
次に現状の確認作業となります。店舗やオフィスに設置されている蛍光灯やダウンライトの照度や配光などを測定し、LED照明に替えたときに色や配光に違和感や変化がないようにするためです。
例えば蛍光灯の場合、明るさや色温度のバリエーションがあります。オフィスや食品売り場、ドラックストアなどでは5000~4200K(ケルビン)ぐらいの白っぽい光を放つ蛍光灯を使いますが、百貨店やブランドショップなどもう少し温か味のある、3500K~3000K の温かみのある光を放つ蛍光灯を使います。LEDも蛍光灯と同様に色温度毎の製品バリエーションがあり、今までお使いになられていた蛍光灯と同じ色温度を持つLEDを使うことで、雰囲気を変えることなくLED照明に替えることができます。
そして既存の電源や配線が引き続き使えるのかどうか、調光器とLED照明がマッチングするのかどうかといった細かい部分の確認を行います。
その際、全面的に天井を落としてやり変える、あるいは天井を落とさずに既存の器具とランプを取り替えるのか検討します。
天井を落とす場合は全面改装ということで問題はありませんが、その分費用が掛かります。既存の器具のみを取り替える場合には新しい器具が元の場所にうまく納まらなかったりすることがあります。また少しでもサイズが違うと、陽に焼けて黒くなった箇所が残って見えてしまうこともあります。そうなると美観的な観点から、クロスの張替えをどうしますか、ということになりかねません。
DNライティング蛍光灯製品のLED照明へのリニューアルに際し、従来の蛍光灯と同じ長さサイズの器具を作ることで、そうしたトラブルをあらかじめ避けるようにしています。既存の調光器もそのままお使いいただけるよう対応したLEDの照明器具を製造しています。
他社の製品に切り替えると規格サイズが違ったりすることもありますが、自社製品同士なら無駄なコストをかけることなく、施工も簡単にできます。
5.LED照明を導入するなら空間の照明計画も練り直そう
LED照明の導入に際し、壁も天井も綺麗にしよう、既存の器具も外してしまおうと、照明プラン自体を新しくしようと思われる方も多いです。そういう場合は、照明デザイナーに相談されることをお勧めします。昔は、天井にベースライトやダウンライトをつけて終わり、という施工が多かったのですが、今は、様々な種類の照明をうまく使い分ける局部照明がメインストリームになってきています。例えば、天井や壁面を使った間接照明にしてみたり・・・。照明の手法も随分変わってきていますので、LED照明の導入をきっかけに今までとは違った、LEDならではの照明プラン・演出を新たに考えられてもいいのではないかと思います。 間接照明イメージ:京都 ホステル 22pieces 客室(STUDIO with LIVING AREA)
撮影:繁田諭 写真事務所