建築と一体設計された虎ノ門ヒルズ ステーションタワー ”光の演出”|《後編》

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建築と一体設計された 虎ノ門ヒルズ ステーションタワー“光の演出”|《後編》

2023年10月に「虎ノ門ヒルズ ステーションタワー」が開業し、更なる進化を遂げている虎ノ門ヒルズ。今は大いに賑わっているが、その魅力の1つに光による演出がある。建築と一体設計された空間の光が人の印象や行動にどのような影響を与えているのか。照明器具の手法や意図、こだわりとは何か。今回は久米設計電気設備設計室主管の前博之氏とグロウ代表取締役の下山竹男氏が語り合った。

tothune.jpg株式会社久米設計環境設備設計本部 電気設備設計室
主管
前 博之 氏
株式会社グロウ
代表取締役
下山 竹男 氏

■ 5F〜7Fへ続くエスカレーターは難易度が高くモックアップを実施

DNL:次に「外観西面」について見ていきましょう。

前 博之氏(以下前):写真で見るように、タワーからボックスと、5F〜7Fへ続くエスカレーターが飛び出すような構造になっています。これを夜見ると外観としては非常に重たく見えてしまう。そこで、全体が浮き上がるような照明にしたいという要望がありました。照明を設置したのは帯状の構造体になりますが、製品の採用に当たっては、DNLの提案でモックアップをつくることになりました。一緒に検証できたのは非常に心強く、実現に向けて大きな後押しとなりました。というのも、エスカレーターの部分が斜めになっており、きれいに照らす難易度が高かったからです。設置場所も通常よりも高温になるような環境であったため、耐候性の高い屋外用製品で、かつその中でも光が伸びる2機種についてもご提案いただきました。2機種のうち、まず屋外用Seamless type LED照明器具「HO2-LEDN」の場合、比較的狭い配光角と側面まで光が回らない器具特性から器具間の暗部が目立つ特徴があります。他方、軒下用Seamless type LED照明器具「SO3-LEDN」の場合は、中角の配光角と、器具側面まで光が回る器具特性から、器具の暗部が目立たない特徴があります。それぞれの特徴を生かして、光らない部分を最小限にできると考えました。ライトアップの手法としては従来からあるものですが、これだけのボリュームで、かつ斜めの部分もありながら、照明をつなげている事例はなかなかないと思います。

下山 竹男氏(以下下山):こうした照明の使い方ができるのも、やはりLEDによる自由度が高まっているからです。ただし、羽目殺しではなく、メンテナンスも考えなければいけないので、施工レベルでは相応の苦労も要します。

前:外観の照明をデザインしたL'Observatoire Internationalのライトアップのコンセプトとしては、遠くからビルを見ても知覚できることを大事にしているそうです。人々が混沌とした都市の中で、行き先に迷わないランドマークであるよう照明が施されているのです。実際、ビルの低層部や高層部のライトアップは今増えているはずです。

下山:きちんとデザインに投資することでビル全体の価値や知名度を高めていく。照明器具もそれに合わせるように製品ラインナップが増えているので、デザインもしやすくなっていますね。

前: モックアップを作って、無事に実現できてよかったと思っています。

hayamiya08.jpg外観 西面 スパンドレル照明(写真提供:株式会社久米設計)
※資料より抜粋
照明納まり初期スケッチ(作成:株式会社久米設計)
照度シュミレーション_断面1
屋外用 Seamless type LED照明器具「HO2-LEDN」と
軒下用 Seamless type LED照明器具「SO3-LEDN」の比較
照度シュミレーション_断面2
スパンドレル照明シュミレーション
※資料より抜粋

■ 最上階の象徴的な空間に広がる非日常の光

DNL:では、「45F エレベーターホール」と「45F GALLERY A」を見ていきましょう。

下山:45Fエレベーターホールについては、御覧になればわかるように、イメージは完全にSFの世界ですよね。45FエレベーターホールではLEDモジュール「FXH-LED(床面は軒下用)」を採用しています。一番苦労したのは連結部に暗部ができてしまうことです。照明器具をつなぎ合わせていくと、給電部が出てきてしまうため、給電部にアクリルを表面にかぶせ、アクリル越しに暗部が出ないような設定をしなければなりません。長いところでは10mあるため、極力つながって見えるように、なるべく光源と光源を付き合わせるようにしました。

toranomon35
光が途切れないための工夫
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TOKYO NODE 45F エレベーターホール(撮影:荒木文雄)
 

前:45Fエレベーターホールには壁と天井、床にもライン照明が入っています。壁と天井はB2Fステーションアトリウムと同じようにアクリルカバーを付けています。床はアクリルですと強度が保てないので、強化ガラスを使用しています。強化ガラスをアクリルと同じように乳白色にしたのですが、全然見え方が違ってしまった。そこで、ガラスカバーの内側にもう一枚アクリルをかませて、なるべく壁や天井と同じように見えるよう工夫しました。それでも実際につくってみないとわからないため、モックアップをつくって実験しました。45F GALLERY Aでは、DNLの製品で最も形状の自由度が高いDNLプロファイルシステム「PFM」を使っています。DNLプロファイルシステムとは、ハウジングの中にテープライトを仕込み、組み合わせてドットレスで継ぎ目のない端まで光る照明です。直線以外でも様々なかたちにカスタマイズが可能で、コの字、十字、X字、斜めカットも可能となっています。公共性が高い人が集まる空間をあえて最上階に持ってくるのはチャレンジングだったと思います。通常であれば一番下に配置して誰もがアクセスしやすくすればいい。あえて最上階に配置して象徴的な空間としたのは、建築主の考えの賜物だと思います。

hayamiya06.jpgTOKYO NODE 45F GALLERY A(写真提供:森ビル株式会社)
hayamiya06.jpgTOKYO NODE 45F GALLERY A 概要
※資料より抜粋
照明納まり図
照明納まり図
DNL プロファイルシステム「PFM」
DNL プロファイルシステム「PFM」

 


■ 空間の過ごしやすさを実現できる間接照明が今求められている

DNL:建築のステージが上がったことで、光を使って空間を演出するケースがますます増えてきそうですね。

下山:照明メーカーには2つのタイプがあり、製品をどう使うかお客様に考えてほしいタイプと、どんな製品がいいのか一緒に伴走しながら考えていくタイプがあります。DNLは製品を納品するだけでなく、設計段階から伴走してくれる点が印象的でした。性能が良い製品は増えていますが、担当者が専門的な知見を共有してくれると設計者にとって安心感があります。

前:私は電気設備設計者として、デザインや快適性の他に省エネについても考える必要があります。照明器具のバリエーションは非常に増えており、LEDに関してはこれ以上の技術革新は望めないかもしれない。その一方で、省エネの法令はどんどん厳しくなっており、照明制御の採用だけでなく、いかに消費電力を減らすかも焦点となっています。DNLには、照明器具の効率化も追求してもらいたいと思っています。

下山:照明のステージは今本当に上がっています。それだけ世間の人々の目が肥えている証左でしょう。これまでのスタンダードな空間では通用しなくなっているのです。東京では新しいビルがどんどんできています。心地よい空間に浸ることが当たり前となっている今、オフィスやホテル、ショッピングなどあらゆる空間で過ごしやすさを実現できる光が求められているのです。

《前編はこちら》


この事例で使用された器具

 

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