こだわりの詰め込まれた魯山人の器を余すことなく堪能していただく照明を

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こだわりの詰め込まれた魯山人の器を余すことなく堪能していただく照明を

島根県安来市にある足立美術館(https://www.adachi-museum.or.jp)は、米国の日本庭園専門誌「ジャーナル・オブ・ジャパニーズ・ガーデニング」による庭園ランキングで17 年連続日本一に選ばれた5 万坪の日本庭園を持ち、横山大観をはじめとする近代日本画などのコレクションで有名な美術館。ここに2020 年4 月、開館50 周年を記念して北大路魯山人の作品を専門に展示する魯山人館が新たにオープンしました。商業施設とは一線を画した美術館の照明は、どのようなものなのか、魯山人館の開設までの経緯を含め、統括本部長の安部氏にお話を伺いました。

 

目次

1.魯山人館の概要とポイント
2.魯山人の魅力を余すことなく見てもらいたい
3.光が降り注ぐ展示室
4.絵画と、質感をもつ器との見せ方の違い
5.器具選びについて
6.これからの美術館のあり方

事例写真撮影:スタジオマップ 前田誠士

 

 

1.魯山人館の概要とポイント

 足立美術館は横山大観をはじめとする日本画や、四季折々の日本庭園で知られ、多くの方がそのイメージで来館されます。しかし実は北大路魯山人作品も充実しています。魯山人コレクションは知る人ぞ知る存在で、これまで当館では約250 点の作品を所蔵しており、その中から陶芸館にて常時50 点前後を展示していました。このコレクションも創設者の足立全康がかねてから集めていたものなのですが、平成2 年に91 歳で亡くなり、その遺志を継いで現在の館長がさらに収集を続け、現在では魯山人の作品だけでも400 点に及びます。

 これをこれまでの日本庭園や横山大観などの日本画と並ぶ、もう一つの柱にしたいと考えたわけです。魯山人館を建てて、多くの方に見ていただき、その魅力を存分に味わっていただきたいということで進められてきた計画が、この魯山人館なのです。

足立美術館 統括本部長 安部則男氏

公益財団法人 足立美術館 統括本部長 安部則男氏

 

2.魯山人の魅力を余すことなく見てもらいたい

 現在の館長は特に魯山人に心酔しており、個人的にも集めているほどなんですが、「魯山人は従来にあるような暗い空間でスポットライトを当てて作品を浮かび上がらせるのではなく、明るい空間で見せたい」という思いを持っておりました。魯山人というのは料理人でもありますし、自ら作った料理を自ら作った器にのせてお客様に提供する、ということをしてきたわけですけれども、料理を美しく見せるためにはその照明や空間を大切にしなくてはいけないと思います。それと同じように魯山人の作品そのものを見ていただくためには、明るい空間でその素晴らしさを余すところなく見ていただきたいと考えたわけです。

 魯山人の作品には優美なものから大胆な力強い作品、さらにとても愛らしい小品など、多種多様なものがあります。そして正面だけではなく後ろ、裏側にもあらゆるこだわりが詰め込まれており、正面から見ただけではその作品の良さを知ることは出来ないのです。明るい照明を採用することによって、そうした魅力的な部分を見逃さずご覧いただきたい、という思いもあるわけです。

 

3.光が降り注ぐ展示室

 照明には最初からこだわっていました。館長は多くを語らない人なのですが、とにかく照明については明るい空間で見せたいという要望をもっていました。だからと言ってただ明るくすれば良いというものでもないので、私としては悩みまして、2010 年に現代日本画を展示する新館を建てた時に照明を担当した灯工舎の藤原工さんに相談しました。

 藤原さんから、間接照明で光が展示室全体に降り注ぐような照明を使えば、館長の思いを叶えることができ、かつこれまでにない展示室が作れるのではないか、という提案を受けました。その後実際に模型を作っていただいて、どんな見え方になるかを確認する機会を設け、それに館長も納得をして、採用したという経緯があります。

rosanjin_indirect.jpg

 

4.絵画と、質感をもつ器との見せ方の違い

 絵画は平面ですが陶芸作品は立体ですから、いろいろな角度から様々な表情が見えます。だからこそ余計に照明にはこだわらなくてはいけないと思いました。そういったことから、今回藤原さんにご提案いただいた照明は最適なものだったと考えています。

 しかし間接照明にして光が降り注ぐように光を当てる、と言っても口で言うほど簡単なことではなく、天井面を真っ白に、余計な突起物のない状態で作らなくてはいけません。通常ですと空調の吹き出し口とか、非常照明だとか、ダクトや配線、いろいろなものが飛び出て邪魔になるわけですが、そういうものを極力排して白い天井を作り上げました。天井の角もアール状に作り、影ができないように工夫しています。


rosanjin_indirect.jpg


 また展示ケースも照明の効果を最大限に発揮するために、4 面ガラス張りにしました。通常は前面だけで側面や天井面はスチールや木材を使っていますが、こうしたものを一切無くして照明の明かりが満遍なく届くようにしているわけです。

 ガラスは通常正面から作品を見ると自分の影が映り込んでしまうことがありますが、この展示ケースには低反射ガラスを使っていますのでそれが一切なく、目の前にまるでガラスがないように感じ、作品に集中していただけます。

 またガラスというのは通常少し緑がかっているのですが、低反射に加え、より透明度の高い高透過ガラスというのを2 枚重ね合わせています。ですから作品そのものの色を忠実にご覧いただけるようになっています。これは照明効果にも十分役立つものですし、これを採用し工夫することで空間が心地よく、作品だけに集中して楽しんでいただける展示室が出来上がったのです。

 

5.器具選びについて

 器具選びに関しては灯工舎さんが最大限に照明効果を発揮するために選んでくださったものを採用しました。我々からは最初の段階で、最低限の仕様としてRa が95 以上、特殊演色評価数R9 〜15 が90 以上、色温度を3000 〜4000ケルビン の間で自由に変えられるものということをお願いしました。

 その結果、SCF-LED のナロータイプ、3000 ケルビンと4200 ケルビンの高演色が二本ついていますが、展示ケースの上部に見えないように仕込んであるので、全く光源が見えません。もちろん脚立に登れば見えますが、お客様の目線からは全く見えず、展示ケースもそうなのですがあくまでも目立たない。主役は陶芸作品なので、照明やケースが目立つのではなく、脇役としていかに作品を良く見せるかという視点で設計してもらいました。

 

6.これからの美術館のあり方

 来館された方々からは、そもそも足立美術館にこれほど魯山人があることを知らなかった、新しい施設ができて楽しみが増え、魯山人の魅力がわかってよかった、という声を聞きます。

 まだこれから試行錯誤することになりますのではっきりとは申し上げられないのですが、新型コロナウイルスの影響で、今までのやり方だけでは通用しなくなりました。館内ではマスク着用や消毒・清掃の徹底、サーマルカメラでの検温や2メートル間隔での鑑賞のお願いなどは実践していますが、今後も様々な課題をクリアしていかなければなりません。足立美術館は独立採算で運営していますので、経営的にも採算との兼ね合いを考えながら新しい美術館のあり方というのを考えていかなくてはと思っています。

 

【この事例で使用された器具】

 

【お問い合わせ・ご相談】

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