次世代照明セミナー レポート2 「ネットも、実店舗も相乗効果で売上が増えたチョコレートメーカーの店舗展開」

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2019.12.3 

次世代照明セミナー「ブランド価値を高めるこれからの空間・照明作りのポイントとは?」

レポート2「ネットも、実店舗も相乗効果で売上が増えたチョコレートメーカーの店舗展開」

昨年12月3日、ブライスヘッドの高橋正明氏をモデレーターに、商空間デザイナーのEMBODY DESIGN 岩本勝也氏と照明デザイナーのL.GROW 榎並 宏氏という、現在国内外で活躍されているお二人をお招きして開催した、次世代照明セミナー「ブランド価値を高める これからの空間・照明づくりのポイントとは?」。そのトークセッション・レポート第2回をお届けします。

第1回では実際にお二人が手掛けたチョコレート製造・販売のブランド「バニラビーンズ」が初めて実店舗を出すまでの実例をもとに伝えていただきましたが、その後バニラビーンズは日本から世界へ発信するブランドへ羽ばたこうとするまでに成長。この快進撃にもお二人の活躍が大きく貢献しています。

今回はその模様から売れる店舗づくりのポイントを探ります。



2 ネットも、実店舗も相乗効果で売上が増えたチョコレートメーカーの店舗展開


(1)駅ビルに出たバニラビーンズ二つめの実店舗

ネットも実店舗も売上増となったバニラビーンズにはデベロッパーからの出店依頼が相次ぐようになります。横浜・神奈川発信にこだわるバニラビーンズは、なかでも条件の良かった川崎アゼリアに出店を決めました。

 

zisedai1203re2_1.jpg(画像3)
zisedai1203re2_2.jpg(画像4)zisedai1203re2_3.jpg(画像5)
zisedai1203re2_4.jpg(画像6)

岩本:ここでの目的というのは、複合施設での今後の展開を見据えて、30坪くらいの中でできることだとか、社員教育的なことも踏まえて実践できるようにというところで展開をシミュレーションしたつもりです。自分たちでアートワークしたりすることもあります。(画像3)実際オープンして繁盛店になっていくことっていうのが僕たちの使命でもあるという感じですね。

榎並:川崎店は、照明的にも基本みなとみらい本店の光の考え方を継承しているんですけれども、みなとみらいとは非常に大きく違う点がひとつあって、それは商業施設なんで隣り合うお店と無意識に明かりを比較してしまうこと。奥に見えるのがバニラビーンズさんです。(画像4)川崎アゼリア内の区画というのが、割と間口が狭くて奥行が深いようなテナント構成をされていて、そうするとこういう見え方になっちゃうんですね、なので、どうしたらショップを気にかけていただいて引き込めるかということをまず考えました。僕はどうしたかというと、ファサード部分の間口が狭いので、まず見えてくる手前の煉瓦面にきっちり明かりを配することで(画像5)、テナントへの気付きを与えてあげようというところから始めています。次に奥行が深いという状況ですが、これって何か奥に気配を感じさせなければ、行きたいなという気分にならないと思うんです。それを明かりで表現するために、当初製作してアイコンともなっていた意匠器具(画像6)ですね。これもみなとみらいと同様のデザインになっているんですけど、それを奥の見える場所に吊ることによって、奥にカフェがあるだとか、奥に何があるんだろうという気配というか、気づきにつなげられればという、そういう照明の工夫をしています。
 

(2)売上増が続くバニラビーンズ三つめの店舗は「鎌倉の路面店」

順調にステップアップをしてきたバニラビーンズは、2019年2月には鎌倉店をオープンします。
zisedai1203re2_5.jpg(画像7)
zisedai1203re2_6.jpg(画像8)

岩本
:ここで目指したのは、横浜から今度、世界にいきたいというオーナーの膨らんでいく夢をひとつずつ叶えていくために日本発信のブランドをつくっていこうということです。構造的に言うとシンプルな木造の柱がある構造の中に大屋根をつけたような建物になっています。ここでは日本ブランドとして、もともと日本の建築文化にある四季を空間の中に取り込むような考え方を主にしながら、日本の風土で育った木や、日本の釉薬を使ったタイルなどを使いながらデザインさせていただきました。

榎並:照明的に鎌倉店というのは、先ほど岩本さんがおっしゃった空間のデザインコンセプトを非常に意識した照明計画をしていて、二つほどコンセプトのキーワードがあるのですが、木組みの手法の建築をいかに美しく見せるか、というのが、今回の僕のミッションの一つでした。ちなみにここの天井ってちょっとアールがかった傾斜がついていて、高いところでたしか6.5メートルくらい。そういう高さのところでは、実際に光を下に配さないとダメだというところがありまして。普通だとこういう梁の横とか下とかに照明器具を付けるという発想になりがちなんですけど、それをやってしまうと結局先ほど言っていた木組みの美しさだとか、そういったものが損なわれてしまうんじゃないかと。そこで僕がとった手法が、この特別にこのプロジェクトに合せてつくっていただいた、吊り下げのものですね。既製品でこういうものって光の広がりだとか、パワー的なものが限られてしまっていて、このプロジェクトにはそぐわなかったので、つくっていただきました。いろいろ苦労したところはあるんですけど、天井にきっちり埋め込み型のフランジをつくったような状況で、さらには傾斜天井というのもネックになってまして、その辺りを綿密に考えていただき、自在金具と呼ばれるものなんかを使うことによって、地震による揺れや、空調の風による揺れとか、機能面でもクリアできています。

次に境界のない曖昧さ、これがもう一つのデザインコンセプトのキーワードになっていました。これについてはまず岩本さんからお願いします。

岩本:日本の建築の中で四季をとりいれたり、外の明るさが中に入ったり、中の明るさが外に行ったり、そういう境界のない曖昧な建築っていうのが日本のもともとの木造の良さで、今の言葉ではフレキシブルというか。榎並さんにはそういうところを照明でも表現できないかというお題を出しました。

榎並:そのお題がどうやったらできるかということを考えたんですが。(画像7)なかなか気づきにくいかもしれませんが、一番奥の壁面、これがベンチのバックに下から上にむかって光を放っているんですけれども、ここで終わっているのが窓に映って続いているように見えるんですね。逆面も同じような仕様になっていて、内から外へ続いていくような明かり感を出しています。そういう光のつながりを意識したような手法をまずはとっています。

もちろん外光が外からエントランスに向かって入ってくるんですが、そこから店内に少し入りこむような明かりを意識させるような、これは天井の吊り下げの照明からとってきて、より中と外の曖昧さっていうのを促せるような光のバランス感にしています。

もう一つこれは2階からとった写真(画像8)。さっき木組みの美しさを表現するという意味合いでお話したもう一つの手法というのがこれで、梁の上を光らせて天井面を明るくしているんですね。これによって見上げたときに梁と、シルエットになった梁、柱、照らされた天井面というところで、高さだとか立体感というのを生み出せるような。見下ろしたときにも同じく、これが実は外まで続いているように見えてくるという。内と外の曖昧さというのをここでも表現させていただいております。

===バニラビーンズ ザ ロースタリー 横浜ハンマーヘッド===

バニラビーンズにとってのゴールは多店舗展開ではなく、真のスーパーブランドになっていくこと。オーナーは赤道直下の村からフェアトレードでカカオを直接買い上げ、集まったお金で小学校を建てています。世界に知ってもらうために、バニラビーンズは実際にインバウンド客もやってくる、今年10月末にオープンした横浜新港の客船ターミナルの中にできた複合施設、横浜ハンマーヘッドに出店します。 

岩本:今回の目的は世界を見据えて、世界中の人たちにバニラビーンズを知ってもらうというところで、ここでは一歩踏み込んで実際にカカオ豆の分別から、つくって食べるところまでできる空間になっています。

大きさ的には150坪あって、そのうちの50坪がファクトリーになっています。コンセプトとしては、いろんな人にわかりやすく見て、体感してもらえる、バニラビーンズ・ミュージアムという考え方で、バニラビーンズがどういうもので、どうやってつくっているかを可視化したものです。

ここの面白いところは、ワンコインでお客様の希望通りのオリジナルの板チョコをつくる体験ができて、新しい機械の導入によって、2、30分でその板チョコを冷却して、その場で食べられるようなお店になりました。その横に併設しているのがショップスペースです。

これもまだ完成形ではありませんが、このハンマーヘッドの店がどちらかというと僕が最初にクライアントとの出会いのときに話した目標形というか、実際にファクトリーがあってつくったものがその場で食べられる、そういうことができるお店にしたいよねと語っていたことが一つの形にはなりました。

レポート3に続く


(取材/文・渡辺いさ子)

<登壇者>


IWAMOTO.jpg
デザイナー
EMBODY DESIGN 岩本 勝也
1988年 大阪芸術大学卒、丹青社入社。ミュージアムデザインを多く手掛けデザインの力で、様々な人にモノとコトを伝える楽しみを知る。 1992年 エンバディデザイン設立。「デザインは、目的を具現化して、社会や人を幸せにすること」を基本理念にして、世界をフィールドに建築・商空間・プロダクト等、領域を問わず活動する。 2004年 別会社レーベルクリエーターズを設立。自らカフェ・ショップを展開し、自己発信しながら社会と向き合う側面も持つ。
JCD賞、DSA賞などの受賞だけに止まらず、ライフスタイル誌「PEN」のデザインアワードも受賞。 著書に「EMBODY DESIGN」(アルファ企画)、「ATE-RE-INNO」(エスプレ)がある。

ENAMI.jpeg
照明デザイナー
L.GROW 榎並 宏
2001年 株式会社USHIO SPAX (現Modulex inc)に入社。 2009年 L.GROW lighting planning roomを設立。
商業空間を中心に建築環境や展示環境、ホテル、住宅にいたるまで様々な空間の照明計画に携わり、独立してからこれまでに手がけた照明計画は800件を超える。 近年では、SHISEIDO THE STORE、浅草ビューホテルロビー、名古屋ISETAN HAUS、MEZZO東京、Burlesque TOKYOなど業態に関わらず、幅広い照明プラニングを行なっている。


TAKAHASHI.jpg
モデレーター
ブライズヘッド 高橋 正明
オランダのインテリア雑誌 FRAMEのライター。フリーで日本の建築、デザイン、アートを世界に向けて発信。 アメリカ、イギリス、ドイツ、マレーシア、香港、国内の雑誌に寄稿。一般社団法人日本商環境デザイン協会(JCD)の広報委員会アドバイザー。 韓国の国際デザイン大賞K-AWARD 2017審査員を務める。キュレーターとしてDIESELのギャラリーやストアの展示構成、 インスタレーションのキュレーションを行う。
著書に「建築プロフェッショナルの解放」、「建築プレゼンの掟」(彰国社)、「World Interior Design1,2」(商店建築社)、「次世代の空間デザイン」「Sweet Interiors & Graphics」(以上、グラフィック社)、「DESIGN CITY TOKYO」(Wiely Academy 英国)等がある。

 

 

 

 

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