次世代照明セミナー レポート1 「デザインとブランドの関係性と実践」

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2019.12.3 

次世代照明セミナー「ブランド価値を高めるこれからの空間・照明づくりのポイントとは?」

レポート1 「デザインとブランドの関係性と実践」

平成から令和へと時代も移り変わり、消費者が求める空間やサービスの在り方も、今、大きく変化しています。商業施設、建築物の空間づくりにおいて、機能とデザインを両立させ、場の価値を高める照明づくりがますます重要になってきているなか、それらのヒントを探るべく、現在、国内外を問わず活躍されている商空間デザイナーのEMBODY DESIGN 岩本勝也氏と照明デザイナーのL.GROW 榎並 宏氏をお招きし、ブライスヘッドの高橋正明氏をモデレーターに、次世代照明セミナー「ブランド価値を高める これからの空間・照明づくりのポイントとは?」を開催いたしました。(場所:AXIS Gallery)

現在賑わっている施設や店舗づくりを牽引するお二人のトークセッションをレポートします。

<登壇者>

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デザイナー
EMBODY DESIGN 岩本 勝也
1988年 大阪芸術大学卒、丹青社入社。ミュージアムデザインを多く手掛けデザインの力で、様々な人にモノとコトを伝える楽しみを知る。 1992年 エンバディデザイン設立。「デザインは、目的を具現化して、社会や人を幸せにすること」を基本理念にして、世界をフィールドに建築・商空間・プロダクト等、領域を問わず活動する。 2004年 別会社レーベルクリエーターズを設立。自らカフェ・ショップを展開し、自己発信しながら社会と向き合う側面も持つ。
JCD賞、DSA賞などの受賞だけに止まらず、ライフスタイル誌「PEN」のデザインアワードも受賞。 著書に「EMBODY DESIGN」(アルファ企画)、「ATE-RE-INNO」(エスプレ)がある。

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照明デザイナー
L.GROW 榎並 宏
2001年 株式会社USHIO SPAX (現Modulex inc)に入社。 2009年 L.GROW lighting planning roomを設立。
商業空間を中心に建築環境や展示環境、ホテル、住宅にいたるまで様々な空間の照明計画に携わり、独立してからこれまでに手がけた照明計画は800件を超える。 近年では、SHISEIDO THE STORE、浅草ビューホテルロビー、名古屋ISETAN HAUS、MEZZO東京、Burlesque TOKYOなど業態に関わらず、幅広い照明プラニングを行なっている。


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モデレーター
ブライズヘッド 高橋 正明
オランダのインテリア雑誌 FRAMEのライター。フリーで日本の建築、デザイン、アートを世界に向けて発信。 アメリカ、イギリス、ドイツ、マレーシア、香港、国内の雑誌に寄稿。一般社団法人日本商環境デザイン協会(JCD)の広報委員会アドバイザー。 韓国の国際デザイン大賞K-AWARD 2017審査員を務める。キュレーターとしてDIESELのギャラリーやストアの展示構成、 インスタレーションのキュレーションを行う。
著書に「建築プロフェッショナルの解放」、「建築プレゼンの掟」(彰国社)、「World Interior Design1,2」(商店建築社)、「次世代の空間デザイン」「Sweet Interiors & Graphics」(以上、グラフィック社)、「DESIGN CITY TOKYO」(Wiely Academy 英国)等がある。


1  デザインとブランドの関係性と実践


(1)デザインとブランド価値について考えていること

高橋:今、デザインというのはブランドから入るものだ、とよく言われます。イギリスのインテリアの教科書は、第1ページ目がブランディングです。もうクライアントはブランドであるという認識もあるし、クライアントがどういうブランドかを知って、それからデザインに入っていくことが多いと思います。そういう意味で今日は「ブランド価値を高める」というタイトルがついていると思うんですが、僕も普段はいろいろなインテリアの取材をしていますが、今日は啓蒙的に照明の面白さが伝わればいいなと思っています。

3人の自己紹介に続いて、岩本さん、榎並さんにご自身の会社のブランディングについて語っていただきます。

岩本:まずEMBODY DESIGNの屋号に秘められた僕の考え方をお話させてもらうと、これは美術用語で精神に形態を与えるとか、思想とか感情を芸術や言葉などで具体的に表現するという意味です。27年間一貫してやってきていることが、「デザインとは目的を具現化すること」という風にとらえています。形にとらわれるだけでなく、正しいデザインというのは、目的やクライアントの夢だとかをちゃんと具現化できているのかというところに真意があるんじゃないかなと。物販であれば、物が売れているのかどうか。飲食であれば、そこで時間を共有する人たちが楽しい時間をとれているのか、料理をおいしく食べられているのかどうかっていう、基本的なところをきちんとクリアしてこそ、時間軸に淘汰されることなく生き残っていくブランドに昇華していくのではないかなと考えています。

2000年頃、クライアントのビジネスを成功に導く夢先案内人になれるかどうかっていうのをすごくキーワードに感じていました。でも当時それは広告代理店や企画会社がやることで、空間デザインをやっている人間がなかなか踏み込んでお話するのは難しかった。でもその頃からEMBODY DESIGNとしては、ブランディングデザインとしてできること、クライアントや個人の魅力を空間とか建物として最大化すること。それを考えてやっていました。目に見える空間や建築に置き換えることができるのは、逆に言うと僕らなんじゃないかなと思っております。

榎並:うちの会社はよくスペルを間違えられるんですが、照明なんで輝きの“GLOW”なんじゃないの? って言われるんですけど、実はうちはグローイング・アップのGROWで“L.GROW”なんですね。照明デザイナーとか照明プランナーという仕事は、僕はクライアントさんだったり、デザイナーさんだったりが求めている空間を光によって少しでも助長できるようなこと。さっき岩本さんが仰っていた、そういう魅力を最大化するっていうビジョンにはすごく共感しますね。

岩本:ありがとうございます。やっぱりオーナーさんって自分の魅力に気づいてないことがすごく多くて、その魅力を引き出してあげるというかいろんな話を聞いたうえで気づかせてあげるというか、そういうのを客観視して、時には言い合いながら、こういう方がいいんじゃないっていうのを突き詰めていく作業かもしれません。プレゼンテーションでいい物をつくるのは簡単なんですけど、オーナーさんとそれを共有できるように、クライアントからするとうざいようなことまで言ってあげるっていうことが一番最初の、もちろんそれで喧嘩して辞めちゃう人もいますが、それを恐れずに、「あなたのいいところはここなんだからこうすべきだよ」というのをうるさく言ってあげられるような事務所でありたいなと思っています。

高橋:それでいいんだと思います。自分の魅力をわかってないクライアントさんは結構多いと思いますから。

そしていよいよここからは、岩本さん、榎本さんがタッグを組んで手掛けたブランド「バニラビーンズ」の実例から、空間づくり、照明づくりのポイントを探ります。バニラビーンズは、ネットショップから今や世界進出をめざすほど、現在進行形で成長を続けている横浜発のチョコレートブランドです。

(2)ネットで人気のチョコレートショップ「バニラビーンズ」の実店舗一号店ができるまで

岩本: 2013年、カフェとショップを併設したお店の場所が見つかったということで今でこそ馬車道から赤レンガの方に向かう道は人通りが増えてますけど、当時は更地の状態で人通りも決して多くなくて、これちょっと難しいかなというくらいの開発状況でした。その中でアイコンとなるようものをつくりたいというところで、ビルの中の一階部分で考えたお店になります。目的はネットでいつも購入していただいているお客様にバニラビーンズのこだわり、考え方を体感してもらえる空間にするという風に考えて提案しました。初めてネットではなく実際に接客する、わざわざ来てくれる人にどういうことができるのかということで、ここで実際にチョコレートをつくる工程とか、ワークショップを行ったり、キッチンの中に入ってもらえるようにしたり、オリジナルのチョコレートをつくれるやり方はできないだろうかと模索したり、まずここにきてもらった人たちに満足してもらえるもの、ネットのファンの人たちにバニラビーンズが考えていることが伝わるようにもっていったつもりです。

商業施設のいいところはやはり施設側が集客してくれる安心感みたいなものがあるんですが、その代りに高い家賃の中で、そこに工場だとかの施設をつくることはなかなかできない。だから一番最初の出会いのときには、それこそ路面店で、映画「チャーリーとチョコレート工場」みたいな実際にチョコレートがつくれるところができたらいいよねと実は話していました。

高橋:ネット販売初めてから実店舗にいくまでどのくらいかかってますか?

岩本:実店舗に4年くらいですかね。実際に僕が出会ってここをつくれるまでに1年半から2年くらいかかっている感じですね。

zisedai1203re1_1.jpg(画像1)zisedai1203re1_2.jpg(画像2)

岩本:平面図(画像1)では黄色の部分がショップのエリアになります。入った人たちから見える奥でつくっているのがファクトリー(青)になっていて、そこでしか食べれないチョコレートドリンクとかをつくれるのがここのエリアになります。カフェゾーンが赤のエリアで、中央のパーテーションを挟んで、入口側の方がショップ、奥にいくとカフェスペースがあるという形です。ここで3つの役割というか、ファクトリーの部分、ショップの部分、カフェの部分に対して、榎並さんに考えていることをお話しました。

榎並:皆さんにお伺いしますが、チョコレートがおいしそうに見える光ってどういう光だと思いますか? 僕もいろいろ検証した結果、電球色、すなわち温かみのある色目の方が、チョコレート自身は美味しそうに見えました。ただそれってチョコレートがむき出しになっている状況の話なんですね。今回のそれぞれ役割をもった3つの空間、僕はこれを異なる3つの手法で演出したらどうかと考えていました。なぜかというと結局パッケージに入っているチョコレートと、お客様の手元でむき出しになっているチョコレート、もう一つの役割としてはそれを調理するための光、チョコレート、というその3つの役割があると思っていて、それぞれを異なる光の手法で表現、演出したらどうかというところで岩本さんとお話を進めていきました。

この十字のマトリックス(画像2)で簡単に説明すると、横軸が光の色温度、色目ですね。右に行くほど色温度が高く、白っぽくなってくる形です。左に行けば行くほど温かみを増してきます。片やグレースケールの縦軸はコントラストを表します。上にいくほどハイコントラストなので、要は空間に対する光のメリハリみたいなものが強くなり、下にいくほどゆるやかなコントラストになってくる。まずカフェの方から説明すると、むき出しになっているチョコレートがおいしそうに見える光の色目というところで軸的には左に寄っている状況、まずそれでチョコレートを良くみせましょうと。それに対して左上のショップに関しては逆にチョコレートはパッケージングされているので、カフェと同じような光の色目では少しぬるさを感じてしまう。それプラス、お客様が商品を手に取りたいと思わせるには少しコントラストが必要。要は商品が浮き上がってくるような、そういう照明演出が必要なんじゃないかというところで抑揚を少し持たせました。さらに3つめのファクトリーのキッチンの役割は、こちらは実際に調理をするところなので完全性だとか機能面というところ。まず、コントラストは極力つけない。影があると機能的に不便だし、あとはキッチンでチョコレートの正確な色目、太陽光に近い形で見るためにはやはり少し色温度を上げた方がいいんじゃないかという、そういう照明の使い分けをしています。

でも、単純にこれ3つを使い分けることだけをやるとちょっと空間的に混沌としちゃうんですよね。割とノイジーな光につながっちゃうので、そこでカフェとショップとキッチンすべてにかかわってくる場所で上部に同じ光を用いたんですね。これをもたせることで、一つの店舗、一つの箱、一つの空間としての空気感を統一したような見せ方を行っています。3つの手法をまとめるためのつながる光というか、そういう手法をとっています。

高橋:これはとても面白い、非常にわかりやすい具体例ですね。

レポート2に続く

(取材/文・渡辺いさ子)

 

 

 

 

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