次世代照明セミナーレポート3「ANAインターコンチネンタル別府リゾート&スパ」客室、レストランが出来るまで、「オービック御堂筋ビルのプロジェクト」特注したDNLのグラデーションライト
次世代照明セミナー「空間の価値を高める これからの照明づくり」レポート2
「ANAインターコンチネンタル別府リゾート&スパ」客室、レストランが出来るまで。
「オービック御堂筋ビルのプロジェクト」特注したDNLのグラデーションライト
登壇者:
照明デザイナー 有限会社スタイルマテック 松本浩作 氏
清水建設株式会社 設計本部 商業・複合施設設計部 石谷貴行 氏
場所:ブリーゼタワー 小ホール(大阪)
(左:松本浩作 氏、右:石谷貴行 氏)
2020年、DNライティングは、大阪に照明実験空間を開設する運びとなりました。それを記念し、去る2月14日に大阪では第一回となる次世代照明セミナーを開催。関西の照明デザイン界のトップランナー、スタイルマテックの松本浩作氏と、清水建設株式会社 設計本部 商業・複合施設設計部 石谷貴行氏をお迎えし、昨夏に開業した「ANAインターコンチネンタル別府リゾート&スパ」での事例をメインに、「空間の価値を高めるこれからの照明づくり」について大いに語っていただきました。また、松本氏からは近作として取り組まれた「オービック大阪御堂筋ビル」についてもお話頂きました。お二人のトークセッションをレポートの第3回(完結編)をお届けします。
目次
1.客室
松本:ひき続き、ANAインターコンチネンタル別府リゾート&スパの今回は客室の照明についてお話してまいります。まず、これが一番宿泊料の高いスウィートルームになりますが、こちらを中心にご紹介します。
(資料59)
(資料59)この客室の和室の中には茶室があるんですけど、そのディテールだったり、いかにきれいに見せるか!みたいなことを我々の方で提案しています。
(資料60)
(資料60)これがちょうど橋本デザイン事務所から出てきたときのインテリアの素材やスペックになります。実は我々が一番気にするのは”艶が有るもの”、”映るもの”なんです。さっと見たときにまずマットな素材かどうか、磨いてある石とかそういうものがでてきたときには、どこに使うのか詳細を確認する作業をします。
(資料61)
(資料62)
(資料61、62)ここでは全館調光を使っていて、(DALI調光)客室の中もすべての負荷に調光がかかっています。
(資料63)
(資料63)これは間接照明ですが、ちょうど真ん中の折上部分が網代になっているので、網代に対して斑なく光を出すため、ここの納まりの形状についてやりとりをしています。四角くなったコーナーも、こうやって工事に対しての指示をしていて、この位置の余裕、25までなら勘弁してあげます。「25ミリに収めていないと、コーナーが暗くなります!」ということの指示を出しています。と同時に、「この立ち上がりに近づけすぎるとLEDのドットが出てしまう可能性があるので、壁から50ミリ離してくださいね」という取付位置の詳細も現場に指示をしています。
(資料64)
(資料64)ほかの間接照明のディテールも全部こういう風にやりとりをしています。これも私のスケッチですけど、「カットオフの位置をここにもってきて、こういう位置に収めてください!」ということのやりとりをしています。
(資料65)
(資料65)これは足元の間接照明。赤とか青とかでいろんな文字が書かれていますが、これは橋本デザインさんからのチェックバック、弊社からのチェックバック。「100を50にしよう、」「納めどうするんだよ?」みたいな、非常に狭小な部分に対するやりとりがなされています。
(資料66)
(資料66)これも間接照明のディテールですけど、これもここが(反射被写体に)映り込むのではなかったので幸いだったんですが、映るものだったら一発アウト!中身丸見えってことになるわけですが、これも50,50くらいまでで、非常に狭小な中で勝負をして美しい間接照明としています。
(資料67)
(資料68)
(資料69)
(資料70)
(資料67)これはスタンダードルームになります。スタンダードルームについてだけはシンガポールの照明デザイン事務所がもともと基本設計をされているんですが(資料68)、我々の方で日本版に置き換えてます。(資料69)ここでも全部DALIの調光システムを使っていますが、ここでは配線経路をどうするかみたいなことまで我々の方で全部指示をしています。(資料70)DALIのシステムに対しては照明のみならず客室の入退室も含めてセンサーでコントロールされています。客室へは入口のカードキーで入りますが、中にセンサーがあって、カードキーで入った瞬間にタイマーが作動してそれから何分か以内に中にいる人感センサーが作動しないと”在室ではない”という判断をする。空調機も在室でないと判断したと同時に温度が上がったり下がったりして省エネ運転を計るみたいなシステムになっています。まだこれからですけど、こういったトータルシステムのどこが空調とか音響とか照明とかの、どこが指示系統である”脳みそ”を司るのか?っていうこと。が今後の照明業界でも一つのテーマになってくるんじゃないかなと思っています。
2.レストラン
(資料71)
(資料72)
(資料73)
(資料74)
(資料75)
松本:最後にレストランですが、「こんな天井どうやってつくるねんやろ?」っていうのが橋本デザインから出てきまして(笑)、しかもこれ照明器具は、朝のモーニングと夜のディナー時間では色温度を変えるべく、調光調色というのを採用しています。
(資料76)
(資料76)これが調光の回路のチェック図です。実はここではレストランとビュッフェのコーナーからバーまでが空間として1つに繋がっているんです。それぞれ入口を入るとレストランになっているような・・・。通常の様に壁があって別の部屋になっていればよかったんですが、本件は3つが全部がつながっている。なので、「奥の鉄板焼きのスペースは夜しか営業しない、昼間は営業しないというときに、営業時間帯の違いに拠って、じゃあ照明はどうしておくの?」と、なるわけです。消してしまえば「終わった感満載」、「消さずに閉店した雰囲気を照明でいかにつくるか?」っていうところが一番我々が苦労したところになります。
(資料77)
(資料78)
(資料77)回路をそれぞれ分けていて、これがシーン別の調光になります。(資料78)それぞれオープンの時間が違って、ランチタイムや、中休みがあったりするんですね。そういったときにどういうシーンにするかということでは特に苦労しました。
ここまで「ANAインターコンチネンタル別府リゾート&スパ」の照明について、長時間、詳細に説明してくださった松本さん。その間ずっとスクリーンの画面を見上げていたので「もう首が痛くなっちゃったよ」と笑いながらも、本当はまだまだ言い足りないことがあるとおっしゃっていました。さらに、最後にいま松本さんが注目されているDNLの製品についてもご紹介くださいました。
3.DNLグラデーションライト
(資料79)
松本:最後に、今日はせっかくDNLさんにお招きいただいたので、どうしても、もう一つのプロジェクト、鹿島建設さんの設計施工のビルから、『DNLライティングさんってこんなことできるの?』って関心したことをご紹介しておきたいんです。
(資料80)
これは僕の希望で特注でお願いした器具なんですけど、見ての通りグラデーションになってるんですよ。大阪の中心部にある『都会の森』がテーマのビルで、1、2階のエントランスにあるものですが、グラデーションで下から色がぐっと白くなっていっているような器具をつくったんですけど、普通はなかなかできない。今日は現物のプロトタイプ2、2回目につくった2号試作品がここにあります(資料80)これが大変なことになってまして、2000ケルビンから3000ケルビンまでグラデーションになるんです。
一般的に普通は300モジュールでLED基盤はつくられるんですが、上から1st試作、2nd試作、3rd試作、最終的には一個一個のチップをバラバラに混ぜていくようなことでグラデーションにしています。DNLさんは工場でこの一個一個の違った色温度のチップを基盤上に載せて変えていくことができる素晴らしい会社で、ただ「大変なんであまり受注したくありません」と言われてしまったんですが(笑)完成を非常に楽しみにしています。
今回は「ANAインターコンチネンタル別府リゾート&スパ」という5つ星ラグジュアリーホテルの事例を中心に、照明づくりについて非常に細かい部分まで具体的にレクチャーしていただき、当日足を運んでくださった大勢のお客様も大満足のご様子でした。非常にタイトなスケジュールの中でも完成度の高さに妥協することなく、この重要なプロジェクトを仕上げていかねばならないという、松本さん、石谷さんお二人のプロフェッショナルな仕事ぶり、ご苦労も伝わってくるセミナーでした。
(取材/文 渡辺いさ子)
【お問い合わせ・ご相談】
お問い合わせは、お問い合わせフォームからお願いいたします。