UV 殺菌の使い方、効果、利用上の注意点

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UV殺菌の使い方、効果、利用上の注意点

〜新型コロナウイルスを殺菌するのに必要な光エネルギーや時間、その特性と実際〜

 

竹下 秀(タケシタ シュウ)
国際照明委員会CIE
第6部会「光生物学と光化学」副部会長
(東海大学工学部 光・画像工学科)

PROFILE

専⾨分野は光環境影響評価、光放射計測⼯学、研究課題は各種光源を組み込まれた装置などの光⽣物学的安全性や光化学特性評価(企業などからの依頼試験)、光放射の絶対量計測に関する研究、太陽紫外線の⻑期変動に関する研究、屋内光環境に関する研究など。
所属学会は国際照明委員会CIE第6部会「光⽣物学・光化学」、照明学会、⽇本照明⼯業会、⽇本光医学光⽣物学会、⽶国光⽣物学会他。
主な論⽂・著書に、『照明⼯学』(照明学会編:第7章「放射の応⽤」オーム社、2012年)、『照明ハンドブック第3版』(照明学会編:9編「光放射の応⽤」編主任他、オーム社、2020年)、『学んで実践!太陽紫外線と上⼿につきあう⽅法』(佐々⽊編著、⽵下・国⽴環境研究所編:丸善、2015年)、『異常気象と気候変動についてわかっていること いないこと』(筆保編、川瀬編著:ベレ出版、2014年)などがある。

目次

1.はじめに
2.光の性質、紫外線によって起こる現象
 ・光とは何か
 ・光のエネルギー

 ・物質に当たった光の反応
 ・紫外線が生物にあたると何が起こるのか

3.殺菌灯による殺菌のしくみ
 ・殺菌灯について
 ・なぜ紫外線でウイルスや細菌を不活化できるのか
 ・細菌やウイルスを不活化するために必要なエネルギー量

4.身の回りのUV殺菌、新型コロナウイルスへの効果
 ・様々な場面で使われているUV殺菌

 ・新型コロナウイルス対策にUV殺菌は有効か
5.紫外線の人体への影響
 ・紫外線が人体に及ぼす作用
 ・許容限界値とは
 ・細菌やウイルスを殺菌する光エネルギーは人間の皮膚や目にも影響を及ぼす
 ・家庭内に殺菌灯を取り付けた場合の効果検証
 ・布の変退色実験結果
6.UV殺菌製品の選び方
 ・紫外線殺菌灯の選び方と注意点
7.まとめ


 

 

 

1.はじめに

 私はUVの研究を30年ほどやってきまして、その結果いろいろなことがわかってきました。
国際照明委員会(CIE)という組織の光生物学とか光化学に関係する研究調査を行う第6部会で副部会長をやっておりますが、CIEの中でも、また関連するIEC(国際電気標準会議)、米国産業衛生専門家会議 (ACGIH)でも様々な動きがあります。
本日はその中で共通する話題についてご紹介していきますが、皆様にお願いしたいのは、UV殺菌製品、中でも殺菌灯が見えるような製品は使わないでいただきたい、ということです。残念ながら殺菌灯そのものが見えるようなUV殺菌製品による健康被害が報告されています。この詳細についてお伝えしたいと思います。

2.光の性質、紫外線によって起こる現象

光とは何か

 まず、紫外線を含む「光」とは何か、という点を図1に示しました。「光」は電磁波の一種です。波長1nmから1mmの電磁波、これを「光」と言っています。照明業界では人間の目で見ることのできる可視光だけをさす場合が多いのですが、いろいろな産業界や研究分野を見てみますと、本日のテーマである紫外線、それから可視光、赤外線この三つを合わせたものを「光」と呼んでいます。

slide1.jpg図1 電磁波の名称と波長(周波数)の区分


光のエネルギー

ではこの「光」はいったいどのくらいのエネルギーを持っているのでしょうか。光には波としての性質と、エネルギー粒子としての性質があります。このエネルギー粒子としての性質を見た場合、エネルギーは図2左上の非常に単純な計算式で計算することができます。エネルギーには通常ジュールという単位を使いますが、光化学の場合はエレクトロンボルト(eV)という単位を使います。
この計算式を使って計算した光のエネルギーを、波長を横軸に、縦軸を555nmのエネルギー、すなわち人間の目の感度が最も高い波長のエネルギーを1として比エネルギーとして示したのが右側のグラフです。
本日は主に254nmの紫外線を取り上げていきますが、254nmの光を持つエネルギーは、555nmのエネルギーの2.2倍もあります。つまり非常に光化学反応を起こしやすい光だということになるわけです。

slide2.jpg図2 光のエネルギーの計算式と、1光子当たりの比エネルギー(555nmを1とした時)


物質に当たった光の反応

次に、この光が物に当たった時、その光の反応はどうなるのかというお話をします。図3の右側に簡単に示しましたが、真ん中に物質があります。光が物に当たるとまず一つは透過します。透過という現象は窓ガラスで確認することができます。もう一つは物質の表面で反射されます。
我々はなぜ物を見ることをできるのかというと、それは物質に当たった光が表面で反射され、その反射された光を見ているわけです。加えてもう一つ、物質に当たった光が吸収されるという現象が起こります。 つまり物質に光が当たった場合、透過、反射、吸収のいずれか、もしくはすべてが発生します。どの現象がどのくらい起こるのかは、当たった光の波長で決まります。
ここで覚えていただきたいのは、物質に吸収された光、これが殺菌などの光化学反応を引き起こすということです。


slide3.jpg
図3 物質に当たった光はどうなるのか

吸収された光は、最終的には光化学反応を引き起こしますが、過程として二つに分けることができます。
一つは落ち着いた状態。これを基底状態と言います。この状態に光が当たり、吸収が起こると物質は興奮状態に陥ります。我々人間も落ち着いている状態もあれば何らかの理由で興奮している状態もありますが、この興奮した状態が延々と続くわけではありません。何かのきっかけで元の落ち着いた状態に戻ります。
光が当たった物質にもこれと同じことが起こります。ではどういう時に落ち着いた状態に戻るかというと、この過程も二つあります。
一つは熱や光に変換されて元の状態に戻ること。光を出して元の状態に戻ることが、「蛍光」「りん光」と呼ばれる現象、もう一つは光を吸収して壊れること、また周囲にある別の物質にエネルギーを渡して元に戻る、という現象です。物質が壊れるのは化学反応そのものですし、他の物質にエネルギーを渡す場合もいろいろな損傷作用が起こることが明らかになっています。


紫外線が生物に当たると何が起こるのか

それでは紫外線が生物に当たった時に、どのようなことが起こるのでしょうか。これについては昔から研究されています。
図4の横軸は波長で、縦軸は紫外線が波長別に当たった時に発生した生物の作用を示しています。細胞死、変異、Dimar生成、それから本日の主題であるバクテリア・ウィルスの不活化すなわち殺菌、これがまとめて示してあります。
皆さんに見ていただきたいのは、実はこれらの作用はDNAの吸収のスペクトル(図中、黒い実線で示す)と非常によく似ているという点です。種によって違うのでは、と思われるかもしれませんが、実は種によらずだいたいこのような作用スペクトルが得られています。

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図4 UVの生物への作用

 


 

3.殺菌灯による殺菌のしくみ

殺菌灯について

実験で使われる殺菌光源は限られており、昔から「殺菌灯」と呼ばれるランプが使われています。このランプにはとても古い歴史があり、1830年代、今から200年以上前まで遡ることができます。これまで色々な方が「生物に紫外線が当たるとどうなるのか」という研究をされていますが、この殺菌灯以外は研究に使いにくく、基本的にはこのランプを使っています。
この殺菌灯は波長254nmの水銀発光を効率よく出すことができるランプで、どのような波長分布になっているのかを示したのが図5の右側のグラフです。波長254nmのエネルギーが全体の90%以上を占めています。
本日の主題である「紫外線でウイルスや細菌を殺すことができる」ということは1900年代の初頭には明らかになっていました。これが明らかになっているために、「殺菌灯」という呼び方をするのです。正式には「低圧水銀ランプ」と呼びます。


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殺菌灯とは


実際どのようなランプかというと、見た目はみなさんが使われてきた蛍光灯と全く一緒です。蛍光灯はこの殺菌灯の発展形なのです。殺菌灯の内面に蛍光体が塗られ、254nmの水銀発光を効率よく可視光に変換したものが蛍光灯です。254nmの紫外線はとても危険です。ですからその光が出ない素材のバルブが使われています。
殺菌灯は非常に効率よく殺菌できますので、実は第二次世界大戦前から病院で病室内の上部の殺菌に使用されていました。


なぜ紫外線でウイルスや細菌を不活化できるのか

ではなぜ殺菌灯を使ってウイルスや細菌を殺すことができるのでしょうか。紫外線による損傷というのはDNAの吸収によるものです。DNAに吸収された紫外線によって二つの反応があるということがこれまでの研究でわかっています。254nmの殺菌灯による損傷について、図6に示しました。
われわれのDNAというのは四つの塩基対で成り立っています。その中の一つのチミン、これが二つ並ぶような状況があり、そこに紫外線が当たると、もともと二つだったチミンが一つに結合します。この状態のことを「シクロブタン型ビリミジン2重体」、ビリミジンダイマーといい、DNAの複製や転写ができなくなります。これによってウイルスや細菌が不活化します。


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図6 ウイルスや細菌の紫外線による不活化の仕組み



細菌やウイルスを不活化するために必要なエネルギー量

次に、波長254nmの殺菌灯を使って殺菌を起こす場合、どのくらいのエネルギーが必要か、ということをご説明します。殺菌灯を当ててすぐに殺菌できるわけではなく、ある程度のエネルギーが必要です。このエネルギーをどのように求めるかを、図7に示しました。瞬時の、一瞬の光のことを「放射照度」と呼び、Wで表します。そしてある程度光が当たり続ける曝露時間、これをSとします。光のエネルギーはこの放射照度に曝露時間(照射時間)を掛け合わせたものになります。図右側のグレーの部分がそれにあたります。
左側に、みなさんが聞いたことがあるような大腸菌、レジオネラ菌、黄色ブドウ球菌、インルエンザウイルス、それぞれの殺菌にどのくらいのエネルギーが必要なのかを示しました。だいたい10mJ/cm2くらいで、これらを殺菌することができます。


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図7 細菌やウイルスを99.9%殺菌するために必要な光エネルギー



4.身の回りのUV殺菌、新型コロナウイルスへの効果

様々な場面で使われているUV殺菌

実はこのUV殺菌、我々の身の回りにもたくさん使われています。食品産業では、食品を入れる容器がUV殺菌されています。それから卵。なぜ生卵が食べられるかというと、生卵の表面がUV殺菌や、その他のいろいろな方法で殺菌されているからです(海外で市販されている卵は殺菌されていないため、生で食べることはやめましょう)。日本国内で販売されている卵は、表面を殺菌しないと流通できません。ですから私たちは卵かけ御飯を楽しめるのです。
その他、レストランなど飲食産業の厨房の殺菌、大規模な温泉施設の温泉水の殺菌、脱衣所などに置かれている、くしの入っているボックス、これもUV殺菌です。あとは理髪店でもくしやハサミの殺菌に使われています。また水族館の水の殺菌、医療現場では病室内の空気、小さな医院ではスリッパを殺菌している施設もあります。
生物研究施設でも使います。図8の写真は生物の研究施設で使われているドラフトチャンバーです。通常の空間で使うと危険性の高いものをこのチャンバーの中で操作し、実験が終わるとチャンバーを閉めて殺菌します。この写真で青白く光っているのが殺菌灯です。開けると危険ですから、シールドを開けるとすぐに消灯する仕組みになっています。


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図8  UV殺菌の応用




新型コロナウイルス対策にUV殺菌は有効か

新型コロナウイルス対策に、このUV殺菌が使えるのか、という問題についてお話しします。基本的には、新型コロナウイルスに対しても、先ほど説明した細菌やウイルスに当てるのと同じくらいのエネルギーを当てれば、殺菌することができるという報告があります(図9)。これだけ聞けばすぐに取り入れたくなると思いますが、まだ疑問があります。



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図9 新型コロナウイルスも他の最近やウイルス同様殺菌できるが・・・


図10は最初にお見せしたUVの生物に対する作用を示した図(図4)を拡大したものですが、この凡例をよく見ると、一番上(赤で囲った部分)に「Human Cells」「Killing」という文字が見えます。これはヒトの細胞が致死する、ということです。それから「Transformation」つまり変異、これも示しています。こちらにはハムスターやマウス、カエルの細胞に対する作用が示されているのですが、見ていただくとわかるようにだいたい同じようなスペクトルになっており、これがDNAの吸収とよく一致する。すなわち細菌やウイルスを殺す場合、その場所にいる我々人間の細胞も殺すことができますし、ハムスターやマウスも殺すことができてしまうということです。




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図10 UVはヒトやマウスの細胞にも影響を及ぼす


 

5.紫外線の人体への影響

紫外線が人体に及ぼす作用

では紫外線は我々の人体に対してどのような影響を及ぼすのでしょうか。
波長254nmの殺菌灯に関して説明しますと、殺菌灯はUV-A、B、Cに区分した場合、UV-Cに区分されるものです。先ほどの説明通り、紫外線を人間に当てるとDNAの損傷が起こります。具体的にどのような反応が起こるかというと、目に対しては角結膜炎、皮膚に対しては紅斑(サンバーン)つまり日焼け、といった現象が起こります。各結膜炎は夜も眠ることができなくなるほどの痛みがあります。紅斑はみなさんよくご存知だと思いますが、夏にひどい日焼けをしてしまった時と全く同じ症状が起こります。




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図11 紫外線による主な人体に対する作用


許容限界値とは

こうした現象が起こるので、実は紫外線は人間に対しても危険な光であるわけです。ではどのくらいまでなら許容できるのか、その許容限界を示したものが「TLV(Thereshold Limited Value)」というものです。これは米国産業衛生専門家会議(ACGIH)というアメリカの政府組織による、人の皮膚や目に対して1日24時間のサイクルで曝露を許容することができる光エネルギーを規定したものです。254nmの光の場合、6.0mJ/cm2、このくらいまでは1日のうちに浴びてもいい、ということが決められています。図12の左側のグラフはTLVの波長別の規定値ですが、波長によってかなり許容限界値が違うということがわかります。しかし254nm〜280nmの領域は非常に少ないエネルギーしか許容されていません。この許容限界値(TLV)は、日本国内ではJISのZ8812として採用されています。またこのTLVの逆数を取り、270nmの値を1として相対値として示したものが図の右側、UV傷害関数S(λ)と呼ばれるものです。これはIEC 62471/CIE S009、それからJISC-7550、光生物学的安全性評価規格として使われています。




slide12.jpg
図12 ヒトの目と皮膚の許容限界値及びUV障害関数


細菌やウイルスを殺菌する光エネルギーは人間の皮膚や目にも影響を及ぼす

人間の場合は先ほど6.0mJ/cm2が限界値と言いましたが、これを前出の様々な細菌やウイルスと比較してみたのが図13です。ここから、細菌やウイルスを殺菌する必要量と、人間の許容限界値がほぼ同じであることがわかります。すなわち、細菌やウイルスを殺菌するのに必要な光エネルギーを浴びると、我々の目や皮膚に対して重篤な障害が発生すると言えます。




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図13 細菌やウイルスを殺菌するのに必要な光エネルギーは、人間の皮膚や目に傷害を与える

ただ、事故報告は意外と少ないです。なぜ少ないかというと、実はこの事故、一晩で大体治るのです。目が痛くて眠れなくなりますが、一晩我慢すれば治ります。それから日焼けも、歩けなくなるほどの過度な日焼けというのはあまり起こらないですし、日焼けは基本的に30日で元の状態に戻ります。そのようなことから眼科や皮膚科を受診するほどの例はあまりないのです。ですから医師に話を聞いても、みなさん口々にこのような事故は聞いたことがないとおっしゃいます。ただし、本当に起こります。
我々が長時間殺菌灯を使うときには、メガネをかけ、フェイスシールドを装着し、手袋をつけます。私も若い頃、短時間ならと裸眼で研究を行ったところ、見事に角結膜炎になり、日焼けもしました。特に目は非常に痛い思いをしましたので、とにかくみなさんには気をつけていただきたいと思います。


家庭内に殺菌灯を取り付けた場合の効果検証

殺菌灯から出た紫外線の特徴は、まず直進します。そして出たところから広がっていきます。離れると、エネルギーは小さくなります。それから物に当たると物の表面で吸収されます。透過することはほとんどありません。それからこれはなかなか理解して頂きにくいのですが、斜めから当たると弱くなるという性質があります。例えば本をまっすぐ見た時の面積があります。本を傾けていくとだんだん見える面積は小さくなります。完全に横になると見えなくなります。これと同様、斜めから紫外線が当たるとエネルギーは小さくなるのです。
このようなことを踏まえて、ご家庭に殺菌灯をつけた場合のシミュレーションをしてみます。図14の×印の所にシーリングライトがありますが、ここに殺菌灯をぶら下げた場合のシミュレーションです。殺菌灯の真下の光エネルギーを1.0とします。ソファーの背もたれは距離は30cmほど近くなりますが、角度がありますので30%くらい減衰します。あとこの部屋の場合右隅にテーブルがあるのですが、ここで65%エネルギーが小さくなります。またテーブルの真下はテーブルによって遮られますので光エネルギーはゼロ、殺菌はできないということになります。


slide14_15.jpg
図14 殺菌灯を取り付けた部屋の殺菌効果


すなわち、殺菌灯の位置によっては全く殺菌されない部分が出てくるということになります。また部屋の中にはいろいろなものがあります。人間や動植物は自己修復能力を持っていますが、物には修復能力はありませんから、UVが当たるとどんどん劣化していきます。このようなことからWHOや 国際照明委員会(CIE)では、UV殺菌は推奨していないのです。


布の変退色実験結果

室内にはいろいろなものがありますが、ここでは布製品の評価結果をお見せします。図15の左側が透過スペクトル、右側が反射スペクトルです。まず左側の透過スペクトルをみてください。赤線が250nmの紫外線を示していますが、光を透過しません。右側の反射スペクトルを見ると、実は254nmまで5%くらいしか反射しないのです。すなわちこの紫外線は透過も反射もせずに大部分は吸収され、吸収されると変退色が発生します。



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図15 ポリエステル布のUV透過・反射スペクトル


変退色、と言っても分かりにくいので、実験をしました。GL-15という殺菌灯を使って25時間、図17の右側のような状態で紫外線を当て続けました。その結果が左側の写真です。赤い布の白っぽくなった部分が紫外線が当たっていた場所です。黄色い布の赤っぽくなっている部分も、紫外線が当たっていた場所です。この実験から25時間ほど紫外線を当てると、このような変退色が起きるということがわかります。




slide16_17.jpg
図16 変退色実験


 

6.UV殺菌製品の選び方

紫外線殺菌灯の選び方と注意点

では紫外線は一体どんなところで使えるのでしょうか。ここからは私の私見ですが、まず皆さんにお願いしたいのは、ランプが見えるような殺菌灯をぶら下げたり、テーブルに置いて使わないでください、ということです。ではどういうものであれば使えるかというと、殺菌灯が内蔵されている空気清浄機です。そして、空気清浄能力や殺菌能力に注意が必要です。選択によっては全く効かない場合もあります(図17)。



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図17 紫外線殺菌製品の選び方

図18は殺菌灯内蔵空気清浄機の基本的な構造です。右側に吸入ファンが付いていますが、ここから周りの空気を吸い込んで、この空気が殺菌灯の横を通り抜けて殺菌され、左側から出てくるという構造です。つまり殺菌灯の横を通り抜けた時に十分空気が殺菌されている必要があるわけです。しかしながら製品によっては殺菌灯が小さすぎたり、殺菌灯の横を通過する空間が広かったりして、十分能力がないものがあります。浄水器の場合は必要な殺菌がされているものしか流通しないようになっています。しかし空気清浄機の場合はそういう技術指針がないようですので、ご注意ください。


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図18 殺菌灯内蔵空気清浄機の基本的な構造

 

7.まとめ

以上お伝えしてきた通り、殺菌灯を使った製品は、条件によっては殺菌効果が期待できますが、使い方を誤ると殺菌だけでなく、その空間にいる人や動植物に対して影響を与えます。さらに部屋の什器類などに変退色や劣化を引き起こす可能性があります。
以上の理由により、一般消費者は紫外線殺菌製品、特に殺菌灯など人間の眼で殺菌灯などの光源が見えるような製品には手を出さないでほしいと思います。

 

 

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