コラムーもっと自由に豊かに明かりを楽しむ

「組み込み照明」という新しい光のスタイル

「組み込み照明」とは?

白熱電球

 人間の暮らしに明かりは不可欠なものです。
 太古の昔から、現在に至るまで、人間はさまざま照明器具を発明し、ともに暮らしてきました。その中でも1792年にイギリスのウィリアム・マードックが発明した「ガス灯」やトーマス・エジソンが開発した白熱電球は、人の生活様式までもすっかり変えてしまうインパクトがありました。

 私たちは、この令和の時代にも、明かりによって生活を豊かにする変化を起こしたいと考えています。それが「組み込み照明」というコンセプトです。

LED

 現在、照明器具の主力はLEDとなりました。
 このLEDには、長寿命や省電力などさまざまなメリットがありますが、小型でも十分な光量を得られる発光効率の良さや発熱量の少なさといった特徴によってこれまで使用することが難しかった用途にも使用することができるようになりました。それが「組み込み照明」の発想につながります。

一般的な洗面台

 従来、照明器具というものは独立した道具でした。天井から部屋全体を照らすシーリングライト、机や棚の上に設置するいわゆる電気スタンドなどです。「組み込み照明」は、本来照明ではない家具にあらかじめ照明を組み込むものです。
 しかし、単純に照明を家具やドア、キッチンや洗面ユニットなど什器と一体化させたもの、イコール「組み込み照明」ではありません。
照明を加えることによって、従来の役割だけでなく、別の価値や新しい用途を持つような家具や什器が私たちDNライティングの考える「組み込み照明」なのです。

 今回はこの「組み込み照明」というコンセプトについて、DNライティング株式会社で商品開発を担当する伊勢田幸祐氏にお話をうかがいました。

組み込み照明のメリットとデメリットはどういったものですか?

 たとえばコレクションを照らすよう最上部にダウンライトを設置したガラスのサイドボードなどこれまでにも家具に取り付けられた照明がなかったわけではありません。しかしこれらは基本的に既存の照明器具を取り付けるため設置用に棚板を厚くしたりするなどデザインが制約されることがありました。

「組み込み照明」は、その点が大きく異なります。家具のデザインに合わせて照明器具を設計開発するため、照明器具の設置条件に縛られることなく、思い描くデザインを実現することができるのです。
 デザインの自由度が損なわれないことが、「組み込み照明」最大のメリットであるといえるでしょう。また専用に開発するため、家具什器の用途や設置場所に応じて照明の明るさ、色、その他の機能などさまざまに付加することも可能です。
 また私たちには長年、照明専門メーカーとして培ってきた膨大なノウハウがあります。デザインや用途、そして好みにあわせて、器具のデザイン、サイズ、明るさ、配光、演色性、色温度、視認性のアップだけでなくさまざまな付加価値を加えた最適な照明を提案することが可能です。

一方デメリットは、そのデザインを実現するための照明器具に極小のものや複雑な機構が求められる場合は、開発期間がある程度必要になることです。また価格の面からも割高になることは避けられません。しかし、その分デザイン面、機能面で優れた希少性の高いものになります。よりラグジュアリーなものを求めるケースなどには適しているといえます。

たとえば洗面台に「組み込み照明」を使ってみたら、具体的にどんな感じになるでしょうか?

 照明には、ものがよく見えるようにするという「視認性の向上」という実用性と居心地のよい雰囲気、空間を演出するふたつの役割があります。
 一般の家庭の洗面所は、浴室の隣の小さなスペースに洗濯機とともに脱衣所に設置されており、実用性のみを考えたつくりになっていることが多いのではでないでしょうか。
 洗面台の上に大きめの鏡が設置され、そこに蛍光灯が据え付けられたユニットタイプ、もしくは天井のダウンライトが鏡を照らすようになっているタイプなどがよく見られます。
 前者は明るく実用性には優れていますが、空間の演出という面ではイマイチ。一方後者は、雰囲気は多少あっても少し暗くて、顔色をチェックしたり、細かいメイクをしたり髪を整えたりといった用途には向きません。
 しかし、ここで組み込み照明を使えば、両者のよいところをカバーした、さらに付加価値の高い洗面スペースを作り出すことが可能です。
 たとえば、鏡の内側に照明を囲むように設置します。スイッチをいれると、平らな鏡面に明かりが浮かびだし、鏡の前に立つ人の顔を明るく照らし出します。実用性ともに使う楽しみも同時に作り出すことができる演出です。

「組み込み照明」のある生活はどんな感じになるのでしょうか?
わたしたちの生活は変わりますか?

 もともと弊社は、商品や空間を魅力的に演出する間接・棚下照明の専門メーカーです。店舗や施設には、趣向を凝らした明かりが戦略的に使用されています。店の什器に設置された照明器具は、そのものは見えない場合がありますが、そこから発する光は、そこを訪れる私たちに影響を与えています。ショップの棚に仕込まれた照明は商品をキラキラと照らし顧客の購買意欲を刺激し、レストランのエントランスに設置された照明はゲストを一瞬で非日常の世界に誘います。

 光は使い方ひとつで生活をより豊かに楽しくしてくれます。これを店舗や施設といった特別な場所だけでなく、住宅や職場など人の暮らしのもっと近い場所でも手軽にできないかというのが「組み込み照明」なのです。
  たとえば、扉を開けるとライトが点灯するクローゼット。収納物がよく見える実用性と服を選ぶ楽しさも感じられます。
 キッチンカウンターに小さなスポットライトがさりげなく付いていたら、ちょっとした料理でもシズル感を演出でき、家族の団らんや食欲の向上にも役立ちます。
 そういった豊かな光のある未来を実現するための今後の課題としては、デザイン性を損ねないためにも、器具のさらなる小型化が求められるでしょう。また配線の簡素化も必要です。電源のジョイントを極小のコネクタ式にしたり、家具への設置をマグネットを用いるなどまだまだ工夫の余地はあります。

「組み込み照明」は今後、私たちの暮らしを豊かに楽しいものにする可能性を持っています。一度組み込み照明を取り入れると、きっと従来の光らない家具が物足りなくなる感じることでしょう。
 ぜひ自由な発想で「光を発する家具」がある生活をイメージしてみてください!

ありがとうございました。

(取材/文・柳舘由香)

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