飯島直樹氏 interview 後編

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飯島直樹氏 Interview 後編


profile
飯島直樹(いいじま・なおき)
1973武蔵野美術大学 造形学部産業デザイン科
工芸工業デザイン専攻卒業
1976-1985スーパーポテト
1985飯島直樹デザイン室設立
2004-2014社団法人 日本商環境設計家協会 理事長
2008-2014KU/KANデザイン機構 理事長
2011-2016工学院大学建築学部 教授

感性を支える「見た目がいい」空間は
人を集め、人を動かす力をもつ

DNLの五反田営業所に常設している一風変わった照明実験空間E139 (dnlighting.co.jp/studioe139)は飯島氏デザインによるものです。
基本的にショールームは、商品のラインアップを現物で見せるという役割を担う一方、昨今では、集まる、試す、創造—といった機能を持つ時代になったと飯島氏は唱えます。前回に引き続き、これからの時代のショールームのあるべき姿についてお話いただきました。

目次

1.時代の仕組みを露出させるショールームの役割
2.アイデアが集まり、企業を活性化させるショールーム
3.人が集まる、使う人が変化する、ショールームは様々な意味をもつ
4.空間のもつ魅力を最大限に生かすスペース作り
5.環境が生み出すものとは

 

 

1.時代の仕組みを露出させるショールームの役割


テクニックの部分で言えば、例えば化粧品の仕事では、女性の肌を綺麗に見せなくてはいけないので上からの光だけではダメ。なのでデパートの一階は横の光に満ち溢れています。照明は気がついていないけれど日常的に深みとして存在しているんですね。狭い空間で様々な条件をクリアしながら作る百貨店の化粧品コーナーは、照明のあらゆるテクニカル面の集積と言っても過言ではありません。

ショールームの経験では1993年ごろ、資生堂で表参道に自分で化粧品を試せるスペースを作りました。当時の資生堂は様々な問題から、これまでの会社のあり方をひっくり返すほどの転換局面を迎えていました。グローバル社会に向けて会社自体が構造的に変わる、そんな変革期の仕事でした。ユーザーとの新しい接点を設けるという視点から、高級なものからリーズナブルなものまで、あらゆる資生堂ブランドの商品を全部試せる、すべてのブランドをミックスしてユーザーに再提示する、ブランドを脱構築する、そうしたショールームでした。その時に意義深いと感じたのは、条件を与えられてデザインするだけでなく、企業が抱える骨格を目に見える形にする、時代の仕組みを露出させる、という役割をこのショールームが担った、ということです。学校や企業のオープンスペースと同じように、ショールームにもそれが表れるんです。今もその精神は銀座の本社に生きています。

2.アイデアが集まり、企業を活性化させるショールーム

最近、松下産業という会社の石のショールームを作りました。もとは大手ゼネコンとの取引が多かったのですが、最近ではデザイナーに直接アプローチして「この石でないと」という観点で選んでもらう、という方向にもシフトする目的をもった仕事でした。

どのショールームも商品のプレゼンテーションという部分は共通していますが、それぞれ商品がもっている物語があるんですね。特に石は見せ方次第でガラリと変わったりします。石はエロティック、官能的なんです。実際に我々がインテリアとして使う場合はその官能性を狙うことがとても多いので、それを感じることができるようにデザインしました。

石にもトレンドがありますが、ヒアリングを重ねていくと石を巡る物語の時代性が見えてきます。これまで商品価値がないと思われていた石だけれども実はとてもいい味をもっていることに気づいたり。鹿児島産の薩摩石というのがあって、叩いたり、磨いたり、バーナーで炙ったり、それぞれの仕上げで違う味が出るし切り方で柄が変わるんですね。それぞれの石が持っている生き物のような表情があるので、それをどう生かすか、という観点を大事にしました。
このショールームができたことで次に起きたのが、日本全国の石を地方支社の社員が持ってくる、という現象でした。この石も使えるんじゃないか、とアイデアが集まってくるんですね。このショールームをめぐって地場産業の活性化にもつながってきたりするんです。

3.人が集まる、使う人が変化する、ショールームは様々な意味をもつ

その場所を使っていろいろな人に来てもらいたい、人が集まる場所にしたい、いろいろな人がいろいろなモチベーションで集まるコモンスペースとしてのショールームを、という要望がありました。ショールームはそうした人が集まる場所でもあり、また社員教育的な側面も持っています。スペースを作っていく過程で、担当の人も石に対する思わぬ反応に驚いていました。逆にSTUDIO E139は照明器具の実験をする場所ですから機能的な空間になっていて、即物的。空間で演出するようなものはむしろ邪魔になります。ですからあえてデザインらしさを排除したんですが、大人の交流場にも使える、そういうショールームが現代的だし、いろいろな人が足を向けてくれると考えたんです。もちろん機能が優先ですが、照明の実験を面白い演出として見せられるような。それでシンプルに仕上げましたが、床のニードルパンチのようなちょっとした素材の使い方は拘っています。テーブルも多角形のものにしたんですが、多角形にすることでいろいろな使い方ができるんです。

4.空間のもつ魅力を最大限に生かすスペース作り

現在進行中のDNLの大阪のショールームは倉庫の端を間借りするような形なんですが、倉庫はそもそも雰囲気があります。相談を受けた時、まず3.6メートルの天井をもっていること、そして即物的で何もしていない良さがある。これはデザイナーとしては嬉しい状況だと思いました。垂直的な迫力のある空間が用意されているので、この条件を最大限に生かせば、伸び上がるように縦方向に空間を持っていける。70 年代くらいのアメリカのミニマルアートのような放置したような展示を考えました。箱状の装置が並び、扉を閉めた状態だと何もないけれど、開けるとそこにはたくさんの器具が展示されている。何もない空間なので普段は会議もできて、セミナーもできる。普通ショールームはお客様に見せる事を目的としているためガラス張りで外からも見えるものが多いんですが、専門業者のショールームの場合は一般の方は入ってこないので、資生堂のようなものとはまったく性質が違います。実際に出来上がったら様々な使い方ができるのではないでしょうか。積極的に使うようになるはず。大学の話と同じですね。

5.環境が生み出すものとは

そもそも間接照明は、実際に見ないとわからない。今までは営業の方に器具を色温度別に数種類持ってきてもらっていました。でもこういう場所ができることですべての器具を見ることができるんです。誰しもがどうなるかわからない不安を抱えてデザインしていたけれど、ここに来れば見られる、カタログでわからないものが掴み取れる。オフィス環境も社会が求めているものとデザインは必ず抱き合わせで動いているのはまちがいなくて、いいジョインの仕方がいい空間を作り上げるんですね。社会とクライアントの要請がいい結合をした時にいい空間ができる。優等生な言い方をするとそういうことになりますが、一方で空間の魅力ってつまるところ色気だともおもっています。感性を支える空間がいい空間だと思います。特に「官能性」という面では照明は非常に重要で、照明なくしては成立しない。DNLの製品は種類が豊富で、繊細なものも多い。なので今までにないデザインを生み出すことができると思います。間接照明と言いつつオブジェ的に光のラインだけ見せるなんていうこともできる。製品は徹底してシンプルでミニマルなので、もし70年代にあったらこれだけでアートと思われるかもしれませんね(笑)。

(取材/文・西澤美帆)

 

 

 

 

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