京都 ホステル 22pieces

22pieces 外観
撮影:繁田諭 写真事務所

多彩な間接照明を配し、暮らすような快適居室づくり

京都駅八条西口から徒歩4分。22piecesは2017年12月にオープンした新しいコンセプトホテル。快適に積極的に「暮らすように」旅を楽しんでもらおうと志向したホテルだ。お客様の思い出の「piece(一片)」を作りたい、そんなコンセプトに基づき設計された部屋は全室34〜36平米という広さ。テラス付き、ロフトベッド付き、リビング付き、ダイニング付きの四タイプで一泊16400〜27400円でのルームチャージ制、いずれもキッチン完備。リーズナブルな値段はもとより、滞在する人の立場に立ってデザインされたスタイリッシュな空間があたかも暮らすような居心地の良さを作り出している。

「海外の旅行者を中心にリピーターがとても多いです。体験を大切にしたい、その姿勢が功を奏したのか、スタッフの対応も含めて『帰ってきたときにほっとするし、旅全体が楽しかった』とおっしゃっていただける要因なのではないでしょうか。」そう語るのはホテルをディレクションするHIGHSPOT DESIGN INC.の企画設計をリードする加藤 直史さん。

光によって空間のイメージが変わる

「お客様はどんなシーンを楽しむのか?、すべてその視点で作っています。多様な体験のシーンに合わせたい。部屋のライトもお客様自身で光を調整していただけるよう、多彩な間接照明と0%調光の器具を取り入れています。光量をグッと絞ることも出来、あらゆるシーンにマッチするような照明をしつらえています。光によって空間のイメージはすごく変わりますから。照明の考え方や設計はとても大事にしています。」

確かにリビングで賑やかに楽しみたいのか、少人数でしっとり過ごすのか、一人で読書をするのか、宿泊客によって部屋での過ごし方は千差万別。照明はそうしたシーンの作り方、居心地の良さにダイレクトに関係する、と加藤さんは言う。

客室(STUDIO with LIVING AREA)
撮影:繁田諭 写真事務所

あらゆるシーンを演出するには、照明が重要な役割を果たす

「22piecesの部屋では、近くのスーパーで材料を買ってお料理をしたり、プロジェクターで旅行中に撮影した写真を映して楽しんだり、さまざまな楽しみ方ができます。リビングで朝食を食べるのか、寝る前に一杯飲むのか、時間とシチュエーションによってお客様独自のスタイルを楽しんでいただく。そのために照明や植栽はとても重要。投資を惜しまず作っています。基本的には建築費や開発コストを材料や工法の工夫で努力し、お客様に還元するというスタンスです。一方、フレキシブルに調光できる照明を設置するにはお金はかかりますが費用対効果が高いと考えています。つまり照明に投資した分だけお客様の好みや状態によって異なる心地良い空間を提供でき、しいては滞在満足度が上がるという好循環が生まれるのだと思います。」

スタッフとのコミュニケーションツールにもなりうる無料貸出しサービス

ここではいわゆる高級なホテルとは違い、人の家に来たようなフレンドリーさを大切にしている。そのためにスタッフもできるだけ話しかけやすい雰囲気を心がけているという。そんな22piecesの魅力の一つがスタッフが選び抜いたさまざまな家電や調理器具、茶器、オーディオ機材などの無料貸出し。これもお客様個々のスタイルを重視したサービスの一つである。

「来ていただいたお客様には存分に楽しんでいただきたい。その考えから私たちが選んだ使い勝手や利便性の高い、ハイエンドな生活道具を無料で貸し出しています。心から楽しんでいただくためにはスタッフとのコミュニケーションも重要なポイントになりますが、この貸し出しをきっかけにコミュニケーションが生まれたらいい、という思いもあるんです」

ロビー
撮影:繁田諭 写真事務所

「アクティブトラベラー」に本物の京都を楽しんでいただくために

ここには部屋の鍵は存在しない。ウェブ上でのオンライン予約が基本。チェックイン時に設定し、チェックアウト時の煩雑さもない。

「チェックインの受付が終わればそこからの関わりはなくても大丈夫なシステムになっているのですが、ホテルの意味を考えたとき、やはりお客様とは接点を持ちたい。たとえば京都の伝統的なもの、有次さんの料理道具を使えたり、一保堂さんのお茶を出したりしているのも、本物を見ていただけたら、という思いがあるんです。本物の京都を堪能するきっかけをつくりたい。私たちはお客様を「アクティブトラベラー」と位置付けているんですが、積極的に楽しんでいただくために、こちらも積極的に体感情報をお伝えしています。時には、紹介がないと入れないようなお店の予約なども承っています」

お客様にどれだけ利益を還元できるか。その感覚がブランドを作る

レセプションを、光による空間演出の工夫を始めとし、「コミュニケーションカウンター」と位置付けたレセプションによる旅の情報発信などのサービスも積極的に行う。そんな徹底したお客様目線で人気を博すこのホテルがこれから目指すものはなんなのだろうか。加藤さんにこれからの目標を伺った。

「サービスの向上と価格の安定がこれからのテーマなのかなと思っています。企業として一室の利益を頂きながらも、お客様にとって安心感、コスパの良さを感じてもらう配慮はとても大事です。適正価格を志向しています。そのためにはお客様にどれだけ利益を還元できるか、という感覚を常に持って、そこを守ること。それがブランドを作ることにつながると思っています」

あらゆる人々が自分なりの旅をより快適に楽しむための、安心できる空間づくり。そのために惜しみなく取り入れられた照明の数々に照らされた心地よいスペース。そこにはアクティブトラベラーの旅のpiece(一片)を照らし出す光が灯っている。

施主:株式会社 ティーエーティー 田畑伸幸
設計:株式会社 宗本晋作建築設計事務所 宗本晋作 堀 賢太
クリエイティブディレクション/内装設計:株式会社 HIGHSPOT DESIGN 加藤直史 廣瀬 悠
設計協力/照明計画:L・GROW lighting planning room 榎並 宏

(取材/文・やすあきを)

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